2004 Fiscal Year Annual Research Report
口腔内立体認知の神経機構-慢性サル体性感覚皮質における特徴抽出ニューロンの性質-
Project/Area Number |
14771029
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
戸田 孝史 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 講師 (40250790)
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Keywords | 口腔内立体認知 / 体性感覚皮質 / 特徴抽出過程 / 階層的情報処理 / 複合型受容野 |
Research Abstract |
本研究課題は、無麻酔覚醒状態のニホンザルを用い、体性感覚皮質の口腔再現領域から単一ニューロン記録を行い、受容野の性質を領野間で比較することにより、口腔内立体認知に必要な皮質内触覚情報処理機構の解明を目指すものである。頭頂葉中心後回の口腔組織再現領域では、前方の3b野から後方の1、2野に向かうにつれて階層的に情報処理が進み、単一ニューロンの受容野が大きく複雑になっていくことをすでに報告している。このような階層性は、最終的な立体認知に必要な統合過程を反映していると考えられる。今後、受容野の範囲だけではなく反応性が領野間でどう変化するかについて、階層性の観点から検討していく必要がある。今年度は、これまでの一連の実験において、3b野、1野、2野で得られた約4000個のニューロンのうち、皮膚、粘膜、歯牙表面をプローブ等で軽く一定方向に撫でる刺激(moving tactile stimuli)に対して特異的に反応するニューロン(MS-Neuron)に焦点を絞り、解析を行なった。その結果、MS-Neuronの出現頻度は、3b野から後方の2野に向かうにつれて漸増する傾向があった(3b野:1.2%、1野:4.4%、2野:7.2%)。さらに、MS-Neuronの中で、特定の方向のmoving tactile stimuliにのみ特異的に反応するニューロンの出現頻度を調べると同様の傾向が認められた(3b野:0.3%、1野:2.4%、2野:5.2%)。これらの結果は、口腔再現領域の3b野から2野に向かう統合過程では、受容野の範囲が大きく複雑になるだけではなく、刺激に対する反応選択性も増すことを意味し、すでに手指領域で明らかになっている知見とも一致する。Moving tactile stimuliに反応するニューロンの機能的意義は今後検討する必要があるが、口腔内で食物等を操作する際に、対象物、あるいは舌や口唇自身の動きを検出するのに役立つものと考えられた。
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Research Products
(2 results)