Research Abstract |
我々は,義歯などの各種補綴装置の製作過程において,従来から行われている回転切削工具による研磨操作に代わるものとして,遠心力を利用して研磨材を発射する研磨システム(遠心発射型研磨装置)を開発した.このシステムで使用する研磨材の構成の違いと試料に対する研磨材の衝突角度の違いが,義歯床用レジンの表面性状に及ぼす影響について検討を加えた. まず,研磨材を構成するコアの性状と表面に付着させる研磨砥粒を変え4種類の研磨材を製作した.これらを使用して,研磨材を衝突させる角度を30,45,60度の3種類設定し,義歯床用レジン試料の研磨操作を行った.研磨の評価として,表面粗さ形状測定機を使用し表面粗さ(Ra)と削除量を,また光沢度計を使用し光沢度(GS60°)を測定した.その結果,研磨材の衝突角度が30度に設定した場合において良好な表面性状が得られた.また,上顎義歯口蓋部の形態を半径20mmの円弧状に想定し,義歯床形態を模した曲面型試料を製作し,この試料の凹面と凸面の表面に対し,研磨材の衝突角度を接線に対して30度として研磨を行い,その表面粗さと削除量について検討した.その結果,平板型試料では,衝突点に近い10mm地点,20mm地点,凹面では10mm地点,20mm地点,30mm地点の各測定点間に表面性状の有意差はみられなかったが,それより遠い点で,表面粗さは有意に大きく,削除量は有意に小さい値を示した.一方,凸面では,10mm,地点に比べ20mm地点の表面粗さは有意に大きい値を示した.その結果,60秒間の研磨によって凹面では,平板型試料と同等の表面粗さと削除量が得られた.一方,凸面では,さらに60秒間延長することにより,同等な表面粗さが得られた. これらのことから,術者が補綴装置の形態を考慮した上で,適切な角度で保持し,必要な時間研磨を行うことで,作業時間も大幅に短縮し,効率的に研磨が行えることが示された.
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