2002 Fiscal Year Annual Research Report
Oral careが老年者に及ぼす器質的、機能的、社会的影響について
Project/Area Number |
14771203
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
蔵本 千夏 東京歯科大学, 歯学部, 助手 (30297345)
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Keywords | 口腔ケア / 介護老人保健施設 / 老年者 / 口腔内細菌数 / Candida菌 / 痴呆 / 義歯 / MRSA |
Research Abstract |
「方法」対象は介護老人保健施設入所者70名のうち本人および家族が口腔ケア介入研究に同意された40名とした。全身的評価および口腔内評価を行い、さらに有歯顎・義歯非使用者群、有歯顎・義歯使用者群、無歯顎・義歯非使用者群、無歯顎・義歯使用者群に分け検討した。実地指導は介護者に対して行い、各入所者に適した口腔ケアを1日3回施行するよう指示した。 「結果および考察」1)被験者の平均年齢は、84.23才、平均残存歯数は5.65±6.27本であった。有歯顎者19名(47.5%)/無歯顎者21名(52.5%)、義歯装着者22名(55.0%)/義歯非装着者18名(45.0%)であり、無歯顎で義歯非装着者は6名(15.0%)であった。2)被験者の85.0%に痴呆を認めた。FIMより抜粋した7項目についてADLを調査した結果、平均点は49点満点中、22.5±11.86点であった。3)RDテスト、サリバスターを行った結果、ケア開始時と比して、2週間後に良好な結果が得られた。4)痴呆を有する者は、痴呆でない者と比して有意にPCRの改善を認めた(P<0.001)。ただし、痴呆を有する者の平均残存歯数は11.47本、痴呆でない者の平均残存歯数は13.50本であった。5)Candida菌の検出率に関してはケア開始時と2週間後とではほとんど差は認められなかった。6)口腔内細菌数を部位別にケア開始時と2週間後において検討し、t検定を行った結果、舌背と口蓋では細菌数に有意差を認めた(P<0.0001)。7)有歯顎者のケア開始時と2週間後の舌背の細菌数を、義歯の使用の有無について検討した結果、義歯非使用者群において有意に減少した(P<0.001)。これは義歯使用により食物が停滞しやすく、細かな口腔ケアが必要とされるためと推察される。8)MRSA選択培地ではMRSA陽性と判断される者は非常に少なく、ケア開始時に認められた者も2週間後では検出されないか、著しい減少傾向を認めた。 以上のことから、介護老人保健施設における口腔ケアの有用性を高めるために、ケア内容の充実をはかるとともに介護者への義歯取り扱い指導と、痴呆を認めない者への積極的なケアが必要であると考えられた。
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