2002 Fiscal Year Annual Research Report
肝細胞増殖因子の細胞運動性亢進作用発現におけるERK-MAPキナーゼの役割
Project/Area Number |
14771284
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
谷村 進 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助手 (90343342)
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Keywords | 肝細胞増殖因子 / 細胞運動 / ERK-MAPキナーゼ / Matrix metalloproteinase |
Research Abstract |
本年度は、肝細胞増殖因子(HGF)の細胞運動亢進作用の発現において、ERK-MAPキナーゼの持続的な活性化が必須であるか、また活性化ERK-MAPキナーゼは細胞内のどこで機能することが細胞運動性の亢進に必要であるのかを中心に解析を行った。 イヌ腎臓上皮細胞をHGFで刺激すると細胞分散運動が誘導される。このとき活性化ERK-MAPキナーゼは刺激後数時間にわったって核内に局在するが、ERK-MAPキナーゼの持続的な活性化を阻害した場合(HGFを添加してERK-MAPキナーゼを活性化させた後、MEK特異的阻害剤PD98059を加える)、あるいはERK-MAPキナーゼの核内移行を阻害した場合(ERK-MAPキナーゼ特異的脱リン酸化酵素MKP-3の変異体を利用)のいずれにおいても、HGF刺激に応答した細胞運動性の亢進が阻害された。これらよりHGF刺激によって細胞運動が亢進されるためには、活性化されたERK-MAPキナーゼが長時間にわたって核内で機能することが必須であることが明らかとなった。 次に、プロモーター領域にAP-1結合領域を持つことからERK-MAPキナーゼ系によって発現誘導が制御される可能性が示唆され、さらに細胞運動に関与することが報告されているMatrix metalloproteinase (MMP)-9に着目して解析を行った。その結果、HGF刺激によってMMP-9の発現亢進が認められ、それはPD98059処理によって抑制された。またMMP阻害剤GM6001、及びepigallocatechin-3-gallate (MMP-2/-9阻害活性を有する)によって、HGFに応答した細胞運動が阻害されることを見い出した。 これらの結果より、HGF刺激によって活性化されたERK-MAPキナーゼは長時間にわたって核内に留まり、転写因子のリン酸化等による機能制御を介してMMP-9の発現を誘導することで細胞運動を亢進することを明らかにした。
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Research Products
(1 results)