2002 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子による糖転移酵素遺伝子群の統括制御と癌細胞の糖鎖修飾の調節
Project/Area Number |
14771303
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
佐藤 武史 (財)東京都高齢者研究・福祉振興財団, 東京都老人総合研究所・増殖分化制御研究グループ, 研究員 (30291131)
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Keywords | β-1,4-ガラクトース転移酵素V / 癌細胞 / 遺伝子発現 / 転写因子 |
Research Abstract |
本年度の研究実施計画に基づいて研究を行い、以下の新しい知見が得られた。 1)ヒト神経芽細胞腫SH-SY5YからPCR法によりEts-1遺伝子を単離し、これをpcDNA3.1に繋ぎ発現プラスミドを作製した。この発現プラスミドをEts-1の発現が低いヒト肺癌細胞A549に導入して2日後に細胞を集め、ノーザンブロットによりβ-1,4-ガラクトース転移酵素(β-1,4-GalT)V遺伝子の発現動態を解析した。その結果、対照に比べてEts-1遺伝子を導入すると、N-アセチルグルコサミン転移酵素(GnT)V遺伝子の場合にも見られたようにβ-1,4-GalTV遺伝子の発現が4倍増大することを見出した。 2)実際の癌細胞において、Ets-1がβ-1,4-GalTVの遺伝子の発現制御を担っているかどうかを調べるために、ヒト胎盤ゲノムライブラリーからβ-1,4-GalTV遺伝子のプロモーター領域を単離し、ルシフェラーゼアッセイにより解析した。Ets-1遺伝子の発現が低いA549細胞にEts-1遺伝子を導入すると、対照に比べて2倍高いプロモーター活性が得られた。一方、Ets-1遺伝子の発現が高いヒト肝癌細胞HepG2に転写活性化領域を欠損したドミナントネガティブEts-1遺伝子を導入すると、対照に比べて著しくプロモーター活性が抑制された。同様の結果は幾つかの癌細胞を用いた場合にも見られたことから、Ets-1によるβ-1,4-GalTV遺伝子の発現制御は癌細胞において普遍的な現象であると考えられた。 以上の結果から、糖鎖の高分岐化を作り出すGnTVとβ-1,4-GalTVはEts-1による制御を受けて、癌細胞に特徴的な高分岐化糖鎖を合成していると考えられる。
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