2002 Fiscal Year Annual Research Report
薬物の血液胎盤関門輸送に及ぼすカルニチントランスポーターの関与
Project/Area Number |
14771304
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
平野 剛 北海道大学, 大学院・薬学研究科, 助手 (00322826)
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Keywords | カルニチン / 血液胎盤関門輸送機構 / 妊婦 / セフェム系抗生物質 / キノロン系抗菌薬 / 両性イオン / BeWo細胞 / 医薬品適正使用 |
Research Abstract |
1.血液胎盤関門輸送機構における評価系の確立 ヒトトロホブラスト細胞由来BeWo細胞を用いた取り込み評価系を確立した。 2.カルニチンの輸送特性 カルニチンの取り込みはNa^+と共輸送され、そのstoichiometryは1:1であった。また、Na^+依存的な取り込みは濃度飽和性を示し、Km値は約6μMと算出された。 3.感染症治療薬の輸送機構の解析 レボフロキサシンの取り込みは、pHにより変化する両性イオンの割合と強い相関を示しpH7.0で最大となった。また、その取り込みは濃度飽和性を示し、かつ低温条件下および代謝阻害剤によって減少するにもかかわらずトランスポーターの関与については不明であった。 4.カルニチンの輸送に対する感染症治療薬との関連 (1)キノロン系抗菌薬 カルニチンの取り込みに対するレボフロキサシンの阻害効果を検討した結果、pH7.4においてはカルニチンの取り込みを顕著に阻害した。また、レボフロキサシンの両性イオンの割合とその阻害効果には相関がみられた。しかしながら、その阻害様式は非競合型であり、カルニチンのNa^+非依存的な取り込みに対しても有意に阻害することが明らかとなった。 (2)セフェム系抗生物質 カルニチンの取り込みは、多くのセフェム系抗生物質の中でもセファロリジン、セフェピムおよびセフピロムなどの4級窒素分子を有し両性イオンとなる薬物により競合的に阻害された。しかしながら、4級窒素を有するにも関わらずジアニオンであるセフタジジムおよびセフスロジンによっては、全く影響を受けなかった。 以上の結果より、生体内で両性イオンとして存在するキノロン系抗菌薬および4級窒素分子を有するセフェム系抗生物質は、カルニチンの取り込みに対して強く影響を与えることが認められた。さらに、その阻害様式の違いは両薬物における正および負電荷の距離に起因することが示唆された。
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