2002 Fiscal Year Annual Research Report
クラスCβ-ラクタマーゼによる抗生物質不活化機構に関する研究
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14771305
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
畑 晶之 千葉大学, 大学院・薬学研究院, 助手 (50241972)
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Keywords | β-ラクタマーゼ / クラスC / 抗生物質 / 脱アシル化反応 / 分子力場計算 / 量子化学計算 / 四面体中間体 / 薬剤耐性 |
Research Abstract |
当初計画に従い、1.クラスCβ-ラクタマーゼによる基質加水分解機構-分子力場計算による検討、2.クラスCβ-ラクタマーゼによる基質加水分解機構-量子化学計算による検討を行った。1については、クラスCβ-ラクタマーゼが被加水分解基質(セファクロル)を活性中心に取り込み、アシル酵素中間体を形成した状態を分子力場計算により求めた。脱アシル化に関与する水分子(Wat)はTyr150により水素結合で保持され、基質カルボニル炭素とも相互作用していた。また、Ser64-Lys67-Tyr150-Lys315-Wat-Glu272の水素結合ネットワークが形成されていた。さらに、Ala318、Ser64は基質カルボニル酸素を保持(オキシアニオンホール)していた。これらの残基は反応に重要な役割を果たしていると考えられる。2については、1で得られた結果を基にモデル反応系を構築し、量子化学計算によりアシル酵素中間体の加水分解(脱アシル化)機構を求めた。脱アシル化反応メカニズムは二つの素反応から構成されることがわかった。すなわち、(1)四面体中間体生成反応、(2)水酸化された基質の脱離反応である。初期構造においては、Tyr150側鎖は負に帯電している。この負電荷により水分子からプロトンを引き抜き、残るOH^-が基質カルボニル炭素に結合し、アシル酵素四面体中間体を形成する。次いでLys67からSer64にプロトンが移動し、基質と酵素が解離する。Tyr150側鎖水酸基はアシル酵素複合体構造において非プロトン化状態で安定し、Lys67及びLys315と水素結合することで安定に保持されていた。通常Tyr側鎖は中性であるが、二つの正電荷(Lys残基)と相互作用することにより負に帯電した状熊で存在できるのである。以上のことから、クラスCβ-ラクタマーゼではクラスAβ-ラクタマーゼにおけるGlu166のような酸性残基の代わりにTyr150がgeneral baseとして働いているのではないかと考えられる。
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Research Products
(1 results)