2002 Fiscal Year Annual Research Report
MAP2を標的とする内分泌撹乱物質による神経新生・再生異常の解析
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14771318
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
水野 恭伸 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助手 (40311865)
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Keywords | 神経ステロイド / 環境ホルモン / 突起伸展 / G蛋白質連関型受容体(GPCR) / アゴニスト / アンタゴニスト / 多動症 / 高次脳機能 |
Research Abstract |
これまで神経活動を制御する神経ステロイドは核内受容体に結合し、遺伝子転写を介してその作用を発揮すると言われていた。それに対して本研究者らは別の神経ステロイドの作用点として細胞膜上のG蛋白質連関型受容体からの細胞内情報伝達とMAP2蛋白質からの微小管重合作用の存在を明らかにし、さらに内分泌撹乱物質が作用点を共有することを示した。内分泌撹乱物質による「キレる」あるいは「注意欠陥多動症」といった精神行動異常のメカニズム解明を念頭に置き、研究を進めている。 まず、精製したMAP2結合を介した微小管重合反応に対する神経ステロイドの反応性を解析した。ステロイド合成の出発物質であるプレグネノロン(PREG)は重合を促進するアゴニスト活性を示したのに対して、DHEAやテストステロンは重合を減少させる逆アゴニスト活性を持つことがわかった。またプロゲステロン(PROG)はPREGによる重合促進に対してアンタゴニストとして働き、各種ステロイドが複雑に微小管重合を制御していることが示唆された。一方で内分泌撹乱物質として知られるビスフェノールA、オクチルフェノール、メトキシクロル、フタル酸エステル(DEHP)などは単独では作用が認められなかったが、PREGの重合促進作用に拮抗し、アンタゴニスト作用を持つことがわかった。また、ノニルフェノールは逆アゴニスト活性を示した。 次に単離したマウス海馬細胞の初代培養系を用いて、樹状突起をMAP2抗体による蛍光染色により観察したところ、PREG添加により樹状突起の数や長さの増加が観察され、PROGにより拮抗された。さらに、マウスの脳室内に投与したのち海馬の樹状突起をゴルジ染色で観察すると、PREGにより明らかに増加した突起をPROGが抑制した。以上より、神経ステロイドは微小管重合を調節し、環境ホルモンはそれを乱すことにより神経活動に影響を与えることが示唆された。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Hitoshi Uchida: "Neurosteroid-induced hyperalgesia through a histamine release is inhibited by progesterone and P, P'-DDE, an endocrine disrupting chemical"Neurochemistry International. 42. 401-407 (2003)