2002 Fiscal Year Annual Research Report
グリア細胞の分化・発達を指標とした化学物質の新規毒性影響評価法の開発研究
Project/Area Number |
14771325
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Research Institution | National Institute for Minamata Disease |
Principal Investigator |
足立 達美 国立水俣病総合研究センター, 基礎研究部・生化学室, 主任研究員 (70300845)
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Keywords | グリア細胞 / グリア線維酸性蛋白質 / O1 / 分化 / 発達 / 白血球遊走阻害因子 / 骨形成因子 / 血小板由来増殖因子 |
Research Abstract |
今年度は、生体内におけるグリア細胞の分化・発達のタイミングにより近い系を構築するために、グリア細胞の分化・発達に及ぼすアストロサイト分化誘導因子の影響を調べた。具体的には、胎生18日目のラット大脳半球から調製した初代培養細胞を、甲状腺ホルモン(TH)、胎仔期の脳に発現が認められるアストロサイト分化誘導因子[白血球遊走阻害因子(LIF)および骨形成因子(BMP)-2]を含む無血清培地で培養し、培養2日後の生細胞数、アストロサイトのマーカーであるグリア線維酸性蛋白質(GFAP)の発現量、オリゴデンドロサイト(O1陽性細胞)の数を調べ、THのみを含む無血清培地で培養した場合と比較した。生細胞数は、LIFおよびBMP-2の影響を受けなかった。GFAPの発現量は、LIFまたはBMP-2の添加によって顕著に増加し、両因子の添加によって更に増加した。オリゴデンドロサイトの数は、LIFの添加によって増加し、BMP-2の添加によって減少したが、両因子の添加では変化しなかった。抗体を用いて培地中の血小板由来増殖因子(PDGF)を中和すると、オリゴデンドロサイトの数はいずれの条件下でも増加したが、生細胞数、GFAPの発現量は変化しなかった。また、PDGFの中和によって、オリゴデンドロサイトの数に及ぼすBMP-2の影響は消失したが、LIFの影響は消失しなかった。以上の結果から、少なくとも今回行った培養条件下では、アストロサイトがPDGFを介してオリゴデンドロサイトの分化に影響を与えていること、並びに、BMP-2のオリゴデンドロサイトの分化に及ぼす影響がPDGFを介した間接影響のみであるのに対し、LIFの影響の一部は直接的であることが示唆される。しかし、いずれの条件下でもオリゴデンドロサイトは2日後から出現し、分化のタイミングは生体内におけるタイミングとは一致しなかった。
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