2003 Fiscal Year Annual Research Report
グリア細胞の分化・発達を指標とした化学物質の新規毒性影響評価法の開発研究
Project/Area Number |
14771325
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Research Institution | National Institute for Minamata Disease |
Principal Investigator |
足立 達美 国立水俣病総合研究センター, 基礎研究部・病理室, 主任研究員 (70300845)
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Keywords | アストロサイト / オリゴデンドロサイト / グリア繊維酸性蛋白質 / メチル水銀 / 分化 / 発達 / 血小板由来増殖因子 |
Research Abstract |
今年度は、化学物質の毒性影響の指標としてのグリア細胞の分化・発達の有用性を推察するために、メチル水銀をモデル化合物として、ラット胎仔脳初代培養系におけるグリア細胞の分化・発達に及ぼす影響を調べた。 まず、胎生18日目のラット大脳半球から調製した初代培養細胞を甲状腺ホルモン(TH)を含む無血清培地で培養し、メチル水銀をシステイン抱合体として曝露し、4日間の生細胞数の変化をコントロール(システインのみを曝露)と比較検討した。その結果、メチル水銀300nM以上を曝露するとコントロールに比べ、生細胞数が低下することが明らかになった。そこで、次に、メチル水銀30および300nMを曝露し、アストロサイトのマーカーであるグリア繊維酸性蛋白質(GFAP)の発現量とO1陽性細胞(オリゴデンドロサイト)の数の変化を調べた。GFAP発現量は、メチル水銀(30および300nM)曝露の2および4日後のいずれの時点においてもコントロールと差は見られなかった。一方、オリゴデンドロサイトの数は、メチル水銀30nMの曝露ではコントロールと顕著な差は見られなかったが、300nMではコントロールに比べ低い値を示した。さらに、細胞をTHおよび血小板由来増殖因子を含む無血清培地で培養し、メチル水銀(30nM)曝露後のオリゴデンドロサイトの出現のタイミングを調べたが、コントロールと差は見られなかった。 以上の結果から、メチル水銀は細胞死を誘導しない低用量の曝露ではグリア細胞の分化・発達にほとんど影響しないことが示唆される。また、ラット胎仔脳初代培養系におけるグリア細胞の分化・発達が化学物質の毒性影響の指標として有用であることを論じるためには、メチル水銀をモデル化合物として用いた本研究の結果のみでは不十分であり、さらにデータの蓄積が必要と考えられる。
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