2002 Fiscal Year Annual Research Report
微小透析法を用いたオピオイド鎮痛薬の作用部位における薬物濃度と薬理作用の解析
Project/Area Number |
14771338
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
黄倉 崇 静岡県立大学, 薬学部, 助手 (80326123)
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Keywords | モルヒネ / モルヒネ-6-グルクロナイド / 脳内分布 / 微小透析法 |
Research Abstract |
モルヒネの活性代謝物であるモルヒネ-6-グルクロナイド(M6G)は、ラットやマウスに脳室内投与すると、モルヒネより100倍以上強い鎮痛活性を示す。その理由は明らかでないが、脳内動態が鎮痛活性に影響を及ぼす可能性がある。そこで、両薬物を脳室内投与後の脳内動態について解析した。 まず、モルヒネまたはM6G(50nmol)を、ラット側脳室に投与し、10〜120分後に脳脊髄液(CSF)及び脳組織を採取し、その薬物濃度を測定した。CSF中M6G濃度は、モルヒネ濃度の5〜37倍高く、これより算出したM6Gの消失クリアランスは、モルヒネのクリアランスの1/10であり、CSF bulk flowと同程度であった。また、脳組織内M6G濃度はモルヒネ濃度より高く、脳室内投与したM6Gはモルヒネより多く脳内に残存した。さらに、ラット脳スライス取り込み実験より算出したM6Gの脳内分布容積は、モルヒネの分布容積の1/3であり、細胞外容積に近似した。次に、脳室内投与したモルヒネとM6Gの脊髄への分布を、脊髄腔内に挿入した透析プローブを用いて微小透析法により調べた。脊髄腔内CSF中M6G濃度は、脳室内投与後180分までのいずれの時間においても、モルヒネ濃度より高く(29〜79倍)、CSFを直接採取して測定したCSF中M6G濃度と同様の推移を示した。これよりM6Gは、脳室から脊髄腔内に速やかに分布することが示され、脳室内投与したM6Gは、脊髄のオピオイド受容体にも作用し、その鎮痛作用を増強することが示唆された。 モルヒネと比較した以上の結果から、脳室内投与したM6Gは、(1)CSFまたは脳からの消失が遅いこと、(2)脳細胞外液、即ちオピオイド受容体近傍に局在すること、(3)脊髄に速やかに分布することが示され、M6Gの脳内分布特性は、その強い鎮痛効力発現に寄与することが示唆された。
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