2002 Fiscal Year Annual Research Report
乳腺細胞の薬物輸送と授乳回避薬物のスクリーニングに関する研究
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14771341
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
上田 秀雄 城西大学, 薬学部, 助手 (50326998)
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Keywords | ヒト乳腺上皮細胞 / 乳汁移行 / 医薬品安全性 / 授乳回避薬物 / 能動輸送 / 有機カチオン輸送系 / 有機アニオン輸送系 |
Research Abstract |
薬物の乳汁移行は、乳児に対する薬物暴露の点で重要な問題であるにもかかわらず、その可能性を正確に評価できるスクリーニング法はない。本研究では、能動輸送を含む薬物の乳汁移行をスクリーニング可能なヒト乳腺上皮細胞培養実験系の構築を試みた。 授乳期乳腺上皮特性に類似した培養細胞系を確立するために、まず種々ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン、プロラクチン)添加パターンの効果を試験し、すでに機能分化が報告されている三次元培養細胞およびTrypsin抵抗性細胞によるmonolayerの形成を試みた。その結果、二回のtrypsin処理に抵抗性を示した乳腺上皮細胞(double resistance HMEC)を用いて形成したmonolayerにおいて、最も高い経上皮抵抗値(平均203.3Ω・cm^2)を示した。この培養系におけるmannitolの透過係数は4.69×10^<-3>cm/hであり、過去の報告で示された条件(透過係数:14×10^<-3>cm/h)を十分に満足できるものと考えられ、薬物輸送特性の評価に対して有用であると考えられた。輸送実験では、double resistance HMEC monolayerを介したtetraethylammoniumの輸送は、basalからapical方向への輸送が有意に大きかったが(P<0.05)、p-aminohippuric acidの輸送には輸送方向性が観察されなかった(P<0.05)。このことから、乳汁方向へカチチン性薬物を能動的に輸送する機能をもったヒト乳腺上皮細胞培養系の確立が可能であると考えられた。しかしながら、本培養系における乳腺細胞の機能分化について併せて評価することが必要であり、β-casein産生能などを指標とし、授乳期の特性を兼ね備えているかどうかという検証をしながら、さらなる培養条件の検討を行う必要があると考えられる。
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