2003 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子診断に内在する倫理的・法的・社会的諸問題に関する日米比較
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14771359
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
平塚 志保 北海道大学, 医学部, 講師 (10238371)
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Keywords | 遺伝学 / 医療倫理 / 医事法 / 優生学 / ELSI / 遺伝子診断 / 遺伝子検査 / 遺伝情報 |
Research Abstract |
1.遺伝医療における医療倫理モデルを検討した。 遺伝技術の応用について、個人に対する遺伝子検査など個人の利益のためになされるもの(医科もしくは臨床遺伝学)と遺伝子スクリーニングなど集団全体の遺伝状態を識別し、予防・改善を図るためのもの(公衆保健遺伝学)に分け、その目的と実践の相違を検討した。その結果、基本的に前者に対しては、個人の自律と意思決定を尊重した基本権モデルが適用され得るが、社会に対しては「連帯」概念を尊重した公衆保健モデルが適用され得る。さらに、社会では「連帯」概念によって、他方家族では「相互依存」概念によって、個人の利益が限定される場合あるいは個人の利益よりも集団の利益が優先される場合がある。公衆衛生モデルについては、その功利主義的で結果主義的な結論を導きやすい欠点があるが、それを最大限回避するために平等な機会を保証するなど、個人に対する社会的不利益を回避するシステムが重要である。 2.英米独を中心とする優生学の歴史を回顧し、現代遺伝学につながり得る問題の射程について検討した。 優生学の起源と発展について、英米独を代表とする主流派優生学と改革派優生学および多様な優生学についてまとめ、さらに進化学と優生学、遺伝学の関係性について考察した。 多くの優生学に共通することは、第一に、その背景に「退化」や「逆選択」につながるおそれがあったことである。これは当時の進化学をはじめとする科学的知見に大いに影響され、優生学はその必要に迫られた問題を解決するための方策として用いられた。第二に、人間の行動の特性について「遺伝」という概念が持ち込まれたことであり、現代に通じるものがある。遺伝学という科学が人類にとって大きな恩恵をもたらすであろう近未来は、優生学の歴史にみられたように、人間に遺伝的な「不適者」という烙印づけをする可能性を秘めた時代として認識することが重要である。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 平塚 志保(財団法人バイオインダストリー協会): "アメリカにおける遺伝情報に基づく健康保険の差別的な取扱い(第2章バイオ事業化に伴う生命倫理等に関する研究〔研究代表 蔵田伸雄〕第3部の6)"平成14年度環境対応技術開発等(バイオ事業化に伴う生命倫理問題等に関する研究)に関する報告書. 102-119 (2003)
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[Publications] 平塚 志保: "遺伝学における2つのモデルの検討"日本生命倫理学会第15回年次大会. 76 (2003)
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[Publications] 平塚 志保: "優生学と遺伝学(一)-その歴史的・倫理的・法的考察-"北海学園大学大学院法学研究科論集. 第5号. 1-44 (2004)
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[Publications] 平塚 志保(阿部俊子, 山口徹編集): "総合保健医療論-これから保健・医療・看護「III.保健医療に関する法と倫理」の「1.区療倫理」の「7」遺伝学の発展と法的・倫理的問題」"ヌーベルヒロカワ. 246(108-111) (2003)