2003 Fiscal Year Annual Research Report
長期運動習慣を有する高齢者の随意運動に伴う脳内情報処理過程に関する研究
Project/Area Number |
14780003
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
八田 有洋 筑波大学, 体育科学系, 講師 (20312837)
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Keywords | 高齢者 / 適度な運動 / 事象関連電位P300 / 認知機能 / 反応時間 / 神経伝導速度 |
Research Abstract |
加齢に伴い身体諸機能が低下することが知られている。一方、高齢者であっても適度な運動を継続することによって身体諸機能が改善されることが報告されている。しかし、運動が脳にどのような影響を及ぼすかについては明らかにされていない。そこで本年度は、長期的に運動を継続している高齢者21名(運動群:69.38±5.5歳)とこれまでに特定の運動習慣をもたない高齢者24名(非運動群:66.38±4.6歳)を対象に末梢神経機能については末梢運動神経伝導速度(MCV)を、中枢神経機能については運動課題遂行中の脳波(事象関連電位P300)と反応時間を記録し、両群の比較を行った。MCVについて、全被験者より上肢の正中神経を測定し、男性のみ下肢の脛骨神経も測定した。事象関連電位P300の記録には体性感覚オドボール課題を用いた。被験者は右手人差し指への刺激に対して床に設置されたスイッチボタンを右足で押し、左手人差し指への刺激に対しては無視するよう指示された。このときに刺激からボタン押しがなされるまでの反応時間も同時に記録した。得られた成果は次のとおりである。 ・下肢の脛骨神経におけるMCVは、運動群(46.34±3.7ms)が非運動群(42.77±2.3ms)よりも有意に早い値を示したが、正中神経のMCVには差が得られなかった。 ・反応時間は運動群(369.87±57.8ms)が非運動群(429.45±68.9ms)よりも有意に早い値を示した。 ・運動群のP300は頭頂部優位の健康成人とほぼ同様の頭皮上分布を示したのに対して、非運動群は前頭部で最大振幅を示し、その頭皮上分布も均一化を示す高齢者の特長が顕著であった。 したがって、適度な運動は加齢に伴う神経系の機能低下進度を緩やかにする効果が期待でき、特に、高齢者の認知機能の維持に有効であることが示唆された。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Arihiro Hatta et al.: "Somatosensory event-related potentials (EPRs) associated with stopping ongoing movement"Perceptual and Motor Skills. 97. 895-904 (2003)
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[Publications] 時任真一郎ら: "前期高齢者の運動課題遂行時における事象関連電位P300と反応時間に関する研究"臨床神経生理学. 31・3. 318-326 (2003)