Research Abstract |
ストレス時における身体の気づきを高め,内的感覚の自己制御を促進することは,パフォーマンス向上を目的としたメンタルトレーニングの一助となると考えられる.例えば,射撃ではビート音を避けて撃つために,絶え間なく生起する心拍時点を感じとらねばならない.では,ほんとうに心拍動は識別できるのであろうか.代表的な評価方法には,R波に同期してタッピングするHeart beat tracking task (McFarland,1975),単位時間内心拍数の見積もりと実際を比較するMental tracking task (Katkin,1985;Ring & Brener,1996;Schandry,1981),R波の同期信号弁別するDiscrimination task (Brener & Kluvitse,1988;Brener, Liu, & Ring,1993;Schneider, Ring, & Katkin,1998;Whitehead, Drescher, Heiman, & Blackwell,1977)がある. 本研究では,従来実験室でしか行われてこなかった内臓知覚課題を実際の競技場面に適用した.まず,様々な評価法を実施したところ,多くの被験者からある一定時間を継続して心拍知覚が可能である評価方法はMental tacking taskであることを得た.そこで,代謝要因による自律神経系へ影響がほとんどないクローズドスキルスポーツを課題として,ストレス事態下での内臓知覚評価を行った.実験計画は,被験者に特性不安の顕著に高いもの8名と同じく低いもの8名を採用し,各被験者が異なる相手と4試合実施し合計32試合を行った.生理指標は心電図および呼吸を,質問紙ではPOMSによる気分状態とSTAIおよびMPIによる不安傾向について測定した.ダーツを用いた標的競技時のストレス条件を操作することで,運動直前におけるMental tracking taskによる内臓知覚能力および特性不安,気分状態とパフォーマンスの関係について検討された.その結果,Mental tracking task精度に個人差はあるものの,特性不安および気分状態の緊張とMental tracking taskとの間に正の相関がみられた.また,勝負を分けるストレス事態下での緊張およびMental tracking taskの精度が高かったことが明らかとなった.詳細については平成15年度の日本心理学会大会および日本生理心理学会学術大会において発表予定である.
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