2003 Fiscal Year Annual Research Report
淡水潟湖沿岸域における伝統的環境利用システムの構造とその崩壊要因-水辺の生業活動と共同体的資源管理の変容過程をめぐる比較研究
Project/Area Number |
14780044
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
佐野 静代 滋賀大学, 教育学部, 助教授 (80273829)
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Keywords | 潟湖 / 内湖 / エコトーン / 生業 / 村落共同体 / コモンズ / エリ / ヨシ帯 |
Research Abstract |
本年度は、日本海沿岸と琵琶湖の潟湖を調査対象として、その沿岸村落における伝統的環境利用と、共同体的資源管理の実態を分析した。特に今年は、淡水性潟湖をめぐる「所有権と用益権」の実態を検証し、「水辺のコモンズ」の時代ごとの様相を明らかにすることに重点を置いた。 潟湖沿岸の水陸移行帯(エコトーン)に成り立っていた「資源へのアクセスに対する社会的規制」について、主に戦前期を対象として詳細な聞き取り調査を実施した。それと並行して村方文書・近代行政文書の分析を行い、水陸移行帯をめぐる共同体的資源管理システムの時代的変遷について検討した。このような水辺エコトーンの所有・用益権をめぐる相克は、水面と陸域との境界帯にあたる「ヨシ帯」において濃厚に現れることから、本研究では「ヨシ帯」における漁撈・水田造成など諸生業間の関係性と、その歴史的変遷について検討した。さらに本研究では、歴史地理学視点による景観分析手法が、地域の環境変化を研究しうる有効な手法となる可能性についても検証した。 ヨシ帯を漁場とするエリ漁については、新たな史料を発見することができ、その分析を通じて、水辺のコモンズ形成をめぐる歴史的過程を長期的動態として追うことが可能であるとの確証を得た。したがって次年度には、近世・近代だけでなく、中世段階での水辺空間をめぐる共同体的資源管理の様相についても引き続き検討する予定である。なお本年度の研究成果は学術論文として公表し、伝統的環境利用の民族技術が今後の潟湖保全に活かされうる可能性を提起した。
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Research Products
(2 results)