2003 Fiscal Year Annual Research Report
油絵具の乾燥における脂肪酸組成の変化に対する顔料の影響
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14780094
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Research Institution | The National Museum of Western Art, Tokyo |
Principal Investigator |
塚田 全彦 独立行政法人国立美術館国立西洋美術館, 学芸課, 研究員 (60265204)
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Keywords | 油絵具 / 油彩画 / 乾性油 / 脂肪酸組成 / 展色剤 / 顔料 |
Research Abstract |
1.ガスクロマトグラフ-質量分析計(GC-MS)を用いた脂肪酸メチルエステル定量法の最適化 昨年度に引き続き、乾性油の構成脂肪酸の量的変化を観測するためめ、GC-MSによる分析条件について検討を行った。今年度は分析対象とする脂肪酸の種類と、定量法として内部標準法の導入について検討を加えた。脂肪酸の種類については、これまで対象としてきたものに2種類の二価脂肪酸を加えて検討することとした。また内部標準法については炭素数15および17の飽和脂肪酸を内部標準として定量することで、良好な結果を得た。 ところで、昨年までに得られた数種のメチル化剤の比較に関する結果の発表準備を行っていた段階で、同様の趣旨の研究発表が他の研究者からなされ、本研究で得られた結果とは異なる結果が示された。試料の前処理については本研究の遂行に当たって非常に重要な点であるため、さらに詳細にこれまでに行った研究を再検討することを余儀なくされた。そのためさらに多大な時間を費やすこととなったが、昨年度までに得られた結果に特に問題は認められなかったため、本研究ではメチル化剤としてm-トリフルオロメチルフェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシドを用いることとした。 2.飽和脂肪酸が乾燥過程でほとんど自動酸化を受けないことの確認 飽和脂肪酸のみより構成されるトリグリセリドと鉛白を混ぜたものを実験室内に放置し、時間経過とともに赤外分光光度計、精密天秤、GC-MSにより変化を観測したが、いずれも観測を行った時間内では本研究での脂肪酸組成の量的検討に影響を与えると考えられる変化は認められなかった。 3.顔料が乾性油を構成する脂肪酸の変化や塗膜の乾燥の早さに与える影響の検討 昨年度に吸油量を測定した顔料約50種について、化学的組成をさらに詳細に分析し、不純物の有無などについて確認した。これらのうち半数程度と亜麻仁油で練成した絵具をカンヴァスに塗布し、その乾燥過程での脂肪酸組成の変化を比較検討した。亜麻仁油のヨウ素価が比較的小さく乾燥に予想以上に時間がかかったが、白色顔料については以前得られたのと同様な結果が得られ、他の顔料についてはこれらとの対比により傾向を検討した。
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