2002 Fiscal Year Annual Research Report
現代ドイツの中等社会科カリキュラム改革に関する教科教育学的研究
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14780141
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
服部 一秀 山梨大学, 教育人間科学部, 助教授 (60238029)
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Keywords | ドイツ / 政治的陶治 / 政治的判断形成 / 地理科・歴史科・公民科 / 社会科 / カリキュラム / 中等教育段階 / 学校教育 |
Research Abstract |
現代ドイツにおける中等社会系教科教育改革め論理構造を明らかにしようとする本研究では今年度、諸州の中等社会系教科教育を政治的陶冶すなわち政治的判断形成と捉え、無批判的政治的判断形成、間接的な批判的政治的判断形成、直接的な批判的政治的判断形成という三つの系統を見出し、代表事例を分析検討した。 無批判的政治的判断形成の事例は、バィエルン州ハオプトシューレの1985年版カリキュラムなどである。この第一系統は、国家適応教育という自国の理解・承認の教育と性格づけられる。間接的な批判的政治的判断形成の事例は、バイエルン州ハオプトシューレの1997年版カリキュラムなどである。この第二系統は、杜会認識教育という自他社会の研究の教育と性格づけられる。直接的な批判的政治的判断形成の事例は、ヘッセン州前期中等教育段階の1995年版カリキュラムなどである。この第三系統は、社会形成教育という自社会の遂行の教育と性格づけられる。 このようにドイツ諸州の中等社会系教科教育には三つの系統を見出すことができるが、それらは無批判的政治的判断形成か批判的政治的判断形成かで大きく分かれる。無批判的政治的判断形成の国家適応教育が地理科・歴史科・公民科であり、間接的な批判的政治的判断形成の社会認識教育からが広義の社会科であり、そのなかでも直接的な批判的政治的判断形成の社会形成教育が狭義の社会科であるとすれば、地理科・歴史科・公民科から広義・狭義の社会科への変革が進められつつあるといえる。 これら今年度の成果を踏まえて次年度は、第一系統からの脱却を図る第二系統と第三系統のそれぞれを下位類型に分類して事例の更なる分析検討を進め、ドイツ社会系教科教育改革の論理構造を具体的に探ることによって我が国の社会科改革への示唆を得たい。
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