2003 Fiscal Year Annual Research Report
筋ジストロフィー症の患者さんのための造形教材の開発
Project/Area Number |
14780149
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
内田 裕子 大分大学, 教育福祉科学部, 講師 (40305024)
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Keywords | 筋ジストロフィー / 障害者 / 造形・美術教育 / ボランティア / 教材 / 補助具・治具 / 生きる力 / ユニバーサルデザイン |
Research Abstract |
本研究は,大分大学教育福祉科学部の美術コースの学生が1999年9月から行っている国立療養所西別府病院筋ジストロフィー病棟での絵画教室ボランティアにおける教材開発を目的としたものである。そこでは,筋ジストロフィーの患者さんが健常者と同じように,あらゆる教材に自由に生き生きと取り組むことができるような造形環境を設計・デザインすることを目標とした。 本研究の実績は次の3つである。1.筋ジストロフィーの患者さんのためのハード教材:「描画製作ボード」の開発,2.筋ジストロフィーの患者さんのためのソフト教材:「教材メニュー」の開発,3.「造形・美術ボランティア」概念の定義。 1の「描画製作ボード」は,患者さんの描画活動を支援する補助具である。患者さん各々の興味関心に対応できるよう,描画以外の造形活動にも使える多目的装置として開発した。その結果,患者さんの製作への意欲及び能力を高め,リハビリテーションにも寄与することができた。また,大分県産の材料を使い,県内の中小企業で製作することを目指したため,地域社会・経済に資する大学及び造形・美術の在り方を示すことにもなった。2の「教材メニュー」は,患者さん用の造形・美術の教科書に相当する。患者さんの心身の状態に適した教材を開発し,カリキュラム化した。3では,絵画教室ボランティアの実践を手掛かりにして,造形・美術の内容に関するボランティアを定義した。 その他,(1)従来に比べて描画補助具が安価に製作できるようになったこと,(2)補助具及び教材メニューの提示によって,患者さんの造形活動に対する意欲が増し「生きる力」に繋がったことなども,成果と認められる。さらに,(3)卒業・修了後,ボランティアを経験した多くの学生が養護学校教諭に採用されていることも,大学におけるボランティア経験の機会を提供した本研究の結果と考えられる。
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[Publications] 内田裕子: "造形・美術ボランティア概念についての一考察-専門家ボランティア実践を手掛かりにして"大分大学教育福祉科学部附属実践総合センター紀要. 第20巻. 73-84 (2003)
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[Publications] 内田裕子: "筋ジストロフィー症の患者さんのための造形教材の開発No.1-健常者の描画に関する身体運動の分析(1)"大分大学生涯学習教育研究センター紀要. 第3号. 57-71 (2003)
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[Publications] 内田裕子: "造形・美術を手段とした地域社会・経済の自律的・持続的成長についての考察"コミュニティ総合研究. 第1号. 97-114 (2004)
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[Publications] 内田裕子: "筋ジストロフィーの患者さんのための造形教材の開発No.4-ソフトウェアとしての教材:「教材メニュー」開発No.1-"大分大学生涯学習教育研究センター紀要. 第4号. 1-15 (2004)
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[Publications] 内田裕子: "筋ジストロフィーの患者さんのための造形教材の開発No.2-筋ジストロフィー患者の描画に関する身体的運動の分析(1)-"大分大学教育福祉科学部研究紀要. 25巻・2号(印刷中). (2004)
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[Publications] 内田裕子: "筋ジストロフィーの患者さんのための造形教材の開発No.3-ボランティアを通して見る「絵画教室」の教材・貢献・学習-"大分大学教育福祉科学部附属実践総合センター紀要. 第21巻(印刷中). (2004)