2002 Fiscal Year Annual Research Report
日本語電子化コーパスの利用による日本語文法教育の研究
Project/Area Number |
14780160
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
杉村 泰 名古屋大学, 言語文化部, 講師 (60324373)
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Keywords | 日本語 / 日本語教育 / コーパス / コロケーション / 文法 / 類義語 / 副詞 / モダリティ |
Research Abstract |
本研究は日本語電子化コーパスを利用して、日本語の使用の実態を調査し、文法研究・文法教育への応用を目指したものである。従来、日本語文法の研究においてはひとりの研究者の頭の中で言える・言えないの例文判断を行うか、少数の日本人に対するアンケート調査を根拠に分析の進められることが多かった。しかし、こうした研究は特定の個人の日本語を記述したものにすぎず、必ずしも全体的な日本語話者の実態を反映したものではない。そこで今年度は日本語の実態調査をするため、コーパスを使って次のような作業を行った。 1.用例の収集(継続中) (1)web上の青空文庫(2)CD-ROM「新潮文庫の100冊」等(3)インターネットのホームページ 2.コロケーション情報の抽出 (1)文末表現とその前接語の共起(2)副詞的表現と文末表現の共起 その結果、これまでの研究で言われてきた事実に誤りのあることが明らかとなった。例えば、従来「〜べきだ」と「〜ようだ」はパラディグマティックな関係にあるとされてきたが、実際には「食べるべきのようだ」のようにシンタグマティックな関係にあること、「きっと」と「〜にちがいない」は共に「蓋然性の高いことを表す」とされてきたが、両者には質的な違いのあること等が明らかとなった。こうした言語事実の発見は、従来言われていた日本語学の常識を根底から覆すものであり、これまでの意味的・統語的説明を修正し新たに説明しなおさなければならないことを示唆している。次年度はさらに多くの用例を収集し、こうした現象のおこる要因について分析し、論文にまとめるつもりである。
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