Research Abstract |
本研究では,科学技術活動を論文「生産」活動と定義し,生産関数の理論を適用することにより,直截的に科学技術活動,とりわけその効率と資源配分の影響を計量することを試みた. より具体的には,ISI社のデータベースを用いて得られる学術論文の書誌情報と研究費の使用状況,研究者数のデータを組み合わせることによって,機関ないし部局レベルの研究の効率性を評価するモデルを作成することを試みた.また,生産関数の形式としては,CES生産関数モデル,対数線形型モデル,コブ・ダグラス型生産関数モデルを採用し,推定を行った. これまで14年度,15年度には理論的な検討を中心に研究を進めてきたものの,研究費の使用状況について(特に部局毎に)公開している大学があまりないため,モデルを具体的に当てはめるプロセスに困難が生じた.そこで,本年度は,分析対象を財務状況の開示が進んでいる私学に絞り,部局評価ではなく大学評価を念頭において,モデルの現実への適応を試みた. しかし,財務状況の開示が進んでいる私学においても,教育費と研究費を合算して公開しているところがほとんどであり,学生数や各学部の規模等を用いて,研究費を推計するという手続きが必要となった.結果として,計量された重要な効果は規模の効果であり,例えば,「研究成果が上がる→研究費が増える」vs.「研究費が増大する→研究成果が上がる」といった因果関係のどちらが強力に働くのかを確認するのに必要なラグの計量等を適切に行うことができなかった.
|