2002 Fiscal Year Annual Research Report
トリチウムの材料表面での挙動と有機結合型トリチウムへの移行挙動に関する研究
Project/Area Number |
14780389
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大矢 恭久 東京大学, アイソトープ総合センター, 助手 (80334291)
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Keywords | 核融合 / トリチウム / ステンレス / X線光電子分光法(XPS) / 昇温脱離法(TDS) / 核融合炉材料 |
Research Abstract |
核融合炉材料表面には燃料として用いられるトリチウムが付着し、これらが汚染拡大を引き起こす可能性が指摘されている。本研究では材料表面でのトリチウムの化学的挙動を解明するためにトリチウムを模擬した重水素を用い、水付着、電気分解、イオン注入という方法を用い材料(ステンレス、SS-304)表面に重水または重水素を吸着、注入し、その際の材料表面の化学状態をX線光電子分光法(XPS)により調べた。また、重水素の滞留量を評価するために昇温脱離法(TDS)を用いて研究を行い、材料表面に付着した重水素放出における温度依存性を調べ、重水素の付着時の化学状態を検討した。 その結果、水付着では表面に酸化物が主に形成されていたが、電気分解では過水酸化物が主に形成されていることが明らかとなった。また、昇温脱離実験の結果から水素の放出は3つのプロセスがあり、それぞれ過水酸化物の分解、水酸化物の分解、構造変化により対流していた水素の放出であると考えられる。一方、イオン注入ではステンレス表面に酸化被膜が形成されていない状態では化学状態も大きく変化せず、TDSの結果から水素が滞留しないことが明らかとなった。これは注入された重水素がステンレス中で捕獲されず、重水素が再放出されると考えられる。 これらのことからステンレス表面では特に表面酸化被膜の化学状態がトリチウムの滞留量に大きく寄与していることが示唆された。今後、さらに詳細に検討するとともに、異なった材料でのトリチウム挙動を調べ、材料の違いによるトリチウム滞留挙動評価を行うとともに、有機結合型トリチウムへの移行に関する検討を行う予定である。
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