2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14780413
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
笠井 亮秀 京都大学, 農学研究科, 助手 (80263127)
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Keywords | 二枚貝 / 有機物 / 干潟 / 内湾環境 / 安定同位体比 |
Research Abstract |
伊勢湾に注ぐ五十鈴川河口域と櫛田川河口域において二枚貝を採集した.得られたサンプルから筋肉組織を取り出し,粉砕,脱脂処理をした後,炭素と窒素の安定同位対比を測定した.また河川上流域,河口域,伊勢湾中央部において水を採集,濾過し,二枚貝の餌と考えられる粒子状有機物を摂取し,塩酸処理,脱塩酸後,炭素と窒素の安定同位対比を測定した. 炭素同位体比δ^<13>Cは,沿岸域に生息するアサリやシオフキなどが約-16.8‰であったのに対し,汽水域に生息するマガキやヤマトシジミはそれらよりも低く約-21.4‰であり,またその偏差も大きかった.空間変化としては上流に生息する二枚貝ほど炭素安定同位体比は小さいが,窒素安定同位体比については炭素ほど差が見られなかった.また水中懸濁物のδ^<13>Cは干潟,河川,内湾域でそれぞれ-25.0,-25.5,・-18.6‰であった.これらの値から計算すると,アサリやシオフキなどは水中懸濁物の約9割が陸上起源有機物で占められている環境に生息しているにもかかわらず,海由来有機物を選択的に摂取しているという結果が得られた.一方マガキやヤマトシジミの餌資源のうち陸上由来有機物の占める割合は約7%〜80%で,上流に生息する個体ほどその割合が大きい. 二枚貝の安定同位体比の時間変化は小さかった.ただし大雨により陸上有機物が大量に流入し,干潟域の水中懸濁物がすべて陸上有機物で占められた場合に限り,同位体比に優位な変動が見られた.通常は海由来有機物を摂取しているアサリやシオフキなども,陸上起源有機物を摂取せざるを得なかったものと思われる. 漁獲量や重量などから見積もると,櫛田川において漁獲されるヤマトシジミによって除去される陸上由来有機物は,約16t/yearとなった.
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