2002 Fiscal Year Annual Research Report
大気中浮遊粒子状物質による花粉症促進効果の物理学的作用機構の解明
Project/Area Number |
14780438
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
下ヶ橋 雅樹 東京大学, 生産技術研究所, 助手 (20334360)
|
Keywords | 花粉 / 大気中浮遊物質 / 花粉症 / アジュバンド / 吸着 / 表面プラズモン共鳴 / ディーゼル排ガス |
Research Abstract |
スギ花粉中のアレルゲンは、雨水などに由来する大気中の水分によってスギ花粉粒子が崩壊し、その結果溶出されてディーゼル排ガス粒子などの大気中浮遊粒子(SPM)に吸着するものと考えられる。本年度はスギ花粉中の粒子の溶出特性に関する検討、ならびに固体表面の性質と花粉アレルゲンの吸着速度に関する検討を行い、環境中での挙動を表現するための動力学的パラメータを求めた。 花粉中のアレルゲンCry j1の花粉粒子からの溶出に対する液性因子の影響を、pHを5〜9の範囲、イオン強度をNaClとして1.7mM〜176mMの範囲で変化させて観察した。なおCry j1の定量に関しては、抗原抗体反応時の表面プラズモン共鳴を応用して行った。その結果、pHに対する溶出速度の依存性は確認されなかったが、イオン強度の増加に伴う溶出速度の増加が見られた。 また、固体表面特性のCry j1吸着に与える影響として、金薄膜表面にC_4、C_8、C_<18>、C_7COOH、ならびにC_8OH基を化学結合させ、さきの表面プラズモン共鳴測定装置によって、これら表面でのCry j1の吸着容量を、吸着速度、脱着速度、ならびに最大吸着量を測定することにより評価した。その結果、官能基の親水性の増加に伴いCry j1の吸着容量が増加する傾向が見られ、C_8OH基においてもっとも吸着容量が高くなった。 以上により求められたパラメータを用い、極めて単純な仮定をおいた大気中浮遊粒子による花粉アレルゲンの濃縮効果を求める計算を行った。その結果、粒子上へのアレルゲン吸着によって、Cry j1が見かけ上100〜10000倍濃縮されることが示唆された。
|