2002 Fiscal Year Annual Research Report
固相に吸着した多環芳香族炭化水素の微生物による輸送・分解特性の評価
Project/Area Number |
14780445
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
宮田 直幸 静岡県立大学, 環境科学研究所, 助手 (20285191)
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Keywords | 多環芳香族炭化水素 / フェナントレン / PAH分解菌 / 担体輸送 / トランスポート |
Research Abstract |
本研究は、多環芳香族炭化水素(PAH)分解菌によるPAHの多様な細胞内輸送・分解特性を解析することを目的としている。分解菌には、Mycobacterium sp.RJGII-135株を用い、まず固相より遊離(脱着)した水相PAHを対象として細胞内への輸送機構の解明を検討した。菌体懸濁液に、[^<14>C]フェナントレンを水溶解度の1mg/L以下になるように添加した後、一定時間毎にガラス繊維フィルター(ワットマンGF/F)で吸引ろ過し、菌体によるフェナントレンの取り込み量を液体シンチレーションカウンターで測定した。その結果、酢酸ナトリウムを炭素源として培養した菌体では取り込みは瞬時に定常に達し、平衡時の取り込み量はフェナントレン添加濃度に比例していた。従って、酢酸培養菌体では水相-菌体間の分配により取り込まれるものと推察した。一方、フェナントレンを炭素源として培養した場合、インキュベーション時間の経過とともに取り込み量は直線的に増加した。この取り込み速度は、種々のフェナントレン濃度においてミカエリス-メンテン式に従うことが示され、見かけの親和定数(K_m)及び最大速度(V_<max>)は26±8nM(±SD)、4.2±0.3nmol/mg of cell/minと算出された。菌体中の^<14>Cを溶媒抽出し薄層クロマトグラフィーで分析したところ、ほぼ全量が代謝物として存在しており、フェナントレンは検出されなかった。この結果は、フェナントレンの取り込みにおいて代謝過程は律速になっていないことを示しており、観察された飽和型の取り込みが担体輸送によるものであることが強く示唆された。さらに、この取り込みはエネルギー代謝阻害剤であるKCNやCCCP(カルボニルシアニドm-クロロフェニルヒドラゾン)により阻害された。以上の結果より、Mycobacterium sp.RJGII-135株は、フェナントレンの添加により誘導されるエネルギー依存性の担体輸送システムによりフェナントレンを取り込むことが明らかになった。
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