2002 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトDNAポリメラーゼκの損傷乗り越えDNA合成に関する構造生物学的研究
Project/Area Number |
14780515
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
橋本 博 横浜市立大学, 総合理学研究科, 助手 (40336590)
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Keywords | 損傷乗り越えDNA合成 / DNAポリメラーゼ / DNAポリメラーゼκ |
Research Abstract |
ヒトDNAポリメラーゼκ(Polκ)は全長870アミノ酸からなる分子量約100kDaのタンパク質である。Polκは損傷乗り越え型のDNA合成酵素であり、たばこの煙や排煙に含まれるベンゾピレンによって損傷したDNAを鋳型にして正しくDNAを複製できる。 polκのC末から110アミノ酸を削り、C末に6残基のヒスチジンを付加させた566アミノ酸からなるpolκ(polκΔC)を大腸菌内に大量発現させた。菌体を超音波破砕し、ニッケルアフィニティー樹脂Ni-NTA、および陽イオン交換カラムHiTrapSPで精製を行い、純粋なPolκΔCを得ることに成功した。得られたpolκΔC溶液を濃縮し、結晶化条件の検索を行った。しかし、1000条件を超える条件検討を行ったにもかかわらず、X線回折実験に適したpolκΔCの結晶を得ることができなかった。その理由としては、polκに本来あるべきC末110アミノ酸がないため、構造が不安定になり、揺らぎの大きな構造となり、結晶化しにくいと考えられる。 そこで、全長polκの大量発現、精製を試みた。これまで予備的な実験では、全長polκを大腸菌内で発現させた場合、polκの発現量は極めて少なく、純粋なpolκを精製することが困難であった。今回、培養条件およびIPTG誘導の条件を詳細に検討したところ、OD=0.5で1mM IPTGで誘導後、培養温度を25℃に下げることで、polκの発現量を増加させることに成功した。ここで発現させたpolκはN末に6残基のヒスチジンが付加されているため、polκΔCと同様な精製プロトコルで純粋なpolκを得ることができると期待できる。
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