2002 Fiscal Year Annual Research Report
複製開始点の系統的破壊による開始点特異性の解明とその制御因子の探索
Project/Area Number |
14780533
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
平岡 美奈 理化学研究所, ゲノム情報比較解析研究チーム, リサーチアソシエイト (40333356)
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Keywords | DNA複製 / 複製フォーク / マルチレプリコン / S期チェックポイント / 出芽酵母 / 染色体 |
Research Abstract |
真核生物の染色体は多数の複製開始点から構成されるマルチレプリコン構造を取っており、個々の開始点は時間的な制御プログラムのもと、秩序正しく複製を開始していくと考えられている。私は、この制御機構およびマルチレプリコンが「何の為に」存在するのかを明らかにすることを目標として、出芽酵母の第6染色体より複製開始点を点突然変異で破壊し、その影響を調べた。現在までに、10個全ての単独破壊株、初期開始点の五重破壊株、後期開始点の五重破壊株およびテロメア内開始点の欠損株を完成した。これらを用いた解析から、以下のことが明らかとなってきている。 1)HUあるいはMMSといった複製ストレス存在下での一倍体細胞の生存率、および改変染色体の喪失頻度の測定結果から、開始点の単独破壊はこれらに顕著な影響を与えないことが示された。 2)活性が高く、かつS期に最も早く複製を開始するARS607を破壊したところ、その近傍に存在する3つの複製開始点(特にARS608後期複製開始点)の活性が上昇した。さらに、このARS607破壊株で他の開始点領域の複製状況を経時的に観測した結果、破壊株、非破壊株の間では開始点の複製開始時期に大きな変化は見られなかった。驚いたことに、ARS608後期複製開始点領域において、他の複製開始点から複製フォークが流れ込んでくる前に、ARS608自身からの複製開始活性が認められた。過去の他の研究結果では、後期開始点は初期開始点からの複製フォークの動きに同調して活性化されていたことから、後期開始点は複製フォークあるいはそれに伴うクロマチン変化に依存して活性化されると考えられていた。しかし、本研究により、個々の開始点は他の開始点からの複製に依存せず、むしろ決まった時間に複製を開始するよう制御されていることが示唆された。
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