2002 Fiscal Year Annual Research Report
カルシウムイオンによる繊毛運動パターンの制御メカニズム
Project/Area Number |
14780547
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
岩楯 好昭 徳島大学, 総合科学部, 助手 (40298170)
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Keywords | 繊毛逆転 / カルシウム / 細胞 / テトラヒメナ |
Research Abstract |
繊毛・鞭毛は,原生動物から高等動物の精子や気管に至るまで,真核生物に普遍的に存在する運動器官である。細胞内カルシウムイオン濃度([Ca^<2+>]_i)に応じて運動パターンを変えるという大きな特徴を持つ。例えば精子鞭毛は[Ca^<2+>]_iが低いと左右対称な鞭毛打を示すが高くなると左右非対称になる。ゾウリムシなど繊毛虫類は[Ca^<2+>]_i上昇によって繊毛打方向を逆転(繊毛逆転)させ,後ろ向きに遊泳する。この[Ca^<2+>]_iによる繊毛・鞭毛運動の制御の仕組みはまったく分かっていない。 繊毛運動は,内部に9組ある微小管という繊維同士が運動性タンパク質ダイニンを介してすべり運動することで実現している。本研究では繊毛虫テトラヒメナの繊毛から精製した微小管の滑り運動が[Ca^<2+>]_iの人為的な操作によりどう変化するか直接観察を試みている。 分子レベルでCa^<2+>による繊毛制御メカニズムを調べるためには,分子機械の運動が観察し得るレベルまで細胞から繊毛を精製しなければならない。その反面,精製して元の状態から離れるほど繊毛の機能は損なわれてしまうはずである。従って,出来るだけ繊毛がナチュラルな状態を保てるよう,繊毛の精製処理を,細胞から繊毛を抜き,付け根の酵素を分解させ,繊毛膜を除去するにとどめることにした。 ゾウリムシから精製した繊毛をMgATP溶液中に置き,微小管の滑り運動を起こした。まず,微小管滑り運動の速度が溶液中のCa^<2+>濃度によってどう変化するのかを測定した。すると,Ca^<2+>存在下ではCa^<2+>無しの場合に比べて微小管滑り速度が有意に遅くなった。 現在,ゾウリムシから精製した繊毛をMgATPとケイジドCa^<2+>を含む溶液中に置き,微小管の滑り運動を起こさせたとき,対物レンズを通した紫外線照射によるケイジドCa^<2+>光分解による溶液中のCa^<2+>濃度上昇によって,微小管滑り運動がどのように変わるか検討している。
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