2002 Fiscal Year Annual Research Report
容量性カルシウム流入機構に関与する分子の生化学的解析
Project/Area Number |
14780588
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
岩崎 広英 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助手 (30342752)
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Keywords | イオンチャネル / カルシウムイオン / 2-APB |
Research Abstract |
細胞においてカルシウムイオンは種々の生理現象において重要な役割を担っており、細胞内におけるカルシウム濃度を制御する仕組みの解明はそれらの生理現象の理解に重要な手がかりを与えるものと考えられる。細胞内カルシウム濃度は平常時において低く抑えられているが、細胞外または細胞内ストアからカルシウムイオンが供給されることにより上昇する。細胞内カルシウムストアからカルシウムが放出されると細胞外からカルシウムイオンを流入させることにより細胞内ストアを再充填する現象が近年注目されており、この現象は容量性カルシウム流入と呼ばれているが、その分子的実体は不明である。 本研究は、容量性カルシウム流入に関与する分子の実体を明らかにすることを目的としている。これまでの知見から、2-aminoethoxydiphenyl borate(2-APB)が容量性カルシウム流入を抑制することが明らかにされているが、その特異性は低く、また阻害効果も弱い。本年度はまず、2-APBと類似の構造をもつ化合物の中に、2-APBよりも特異的であり、なおかつ強い阻害効果を持つような物質がないかどうかを探索した。その結果、上記の条件を充たすような化合物を見出すことに成功した。2-APBは細胞内からのカルシウム放出に関与するInositol 1,4,5-trisphosphate(IP3)受容体に対しても阻害効果を持つことが知られているが、本研究によりある種の2-APB analogueはIP3受容体に対する阻害効果を持たず、かつ容量性カルシウム流入を2-APBよりも強力に(2-APBのIC50が5μMであるのに対し、本研究により見出された化合物ではIC50は約58nM)抑制することを見出した。このように特異性の高い、かつIC50の小さい化合物は本研究により初めてもたらされたものである。 平成15年度にはさらにIC50の小さい化合物の探索を行うとともに、探索の結果最適と思われる化合物に放射性同位元素を導入し、結合タンパク質の同定にとりかかる予定である。また、この化合物を用いて平滑筋やアストロサイトなどにおける容量性カルシウム流入の生理的意義の解明に関する実験も合わせて行う予定である。
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