2003 Fiscal Year Annual Research Report
アミロイド前駆体蛋白質APPThr668リン酸化によるシナプス可塑性制御機能解析
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14780613
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
関 健二郎 独立行政法人理化学研究所, 行動遺伝学技術開発チーム, 研究員 (50342803)
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Keywords | APP / リン酸化 / 老齢 / 海馬 / シナプス可塑性 / 抑制性神経 / ムスカリン受容体 / アルツハイマー病 |
Research Abstract |
アミロイド前駆体蛋白質(APP)はアルツハイマー病患者脳に沈着するアミロイドベータの前駆体である。APP695は、膜1回貫通型受容体構造を持ち、細胞内ドメイン668番Threonine(Thr668)がCDK5等により神経系特異的にリン酸化を受ける。この様な構造から、APPは未知のリガンドと相互作用し、細胞内ドメインを介する情報伝達を制御している可能性が考えられる。本研究はAPPの生理機能の解明のため、Thr668を非リン酸化型のAlanine(リン酸化が起きない)に置換した変異(APP668A/A)マウスを作成した。APP668A/Aマウスは正常に発達し、脳構造およびAPPの局在に影響を与えない。ところが、週齢の増加(12-15ヶ月)に伴い、海馬CA1野におけるシナプス長期増強(LTP)が野性型と比べ有意に減少していた。APP668A/AマウスのLTPの低下は、GABA-A受容体阻害剤であるピクロトキシンにより消失した。さらにAPP668A/Aマウスではピクロトキシン感受性が著しく減少し、抑制性神経機能が低下していた。一方GABA作動性神経系の上位にあるコリン作動性神経系の関与について調べた所、ムスカリン受容体拮抗剤であるアトロピンによりLTPの異常が消失した。またM2受容体拮抗剤であるメトクトラミンによりLTPの異常が消失した。そこでAPP668A/Aマウスで認められるM2受容体の増加とGABA放出との関係を調べた所、メトクトラミンによりGABA放出機能の低下が消失した。以上の結果から、APP668A/A老化マウスではM2受容体機能が亢進し、M2受容体刺激により、GABAの放出が著しく抑制され、海馬シナプス可塑性機能が低下する事が分かった。本研究により、週齢の増加に伴う海馬、興奮生-抑制性の恒常性維持にAPPリン酸化が重要である事が明らかとなった。
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