2002 Fiscal Year Annual Research Report
バクテリオファージのリアリスティックモデルによる遺伝子調節機構の研究
Project/Area Number |
14780637
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
下川 哲也 大阪大学, 基礎工学研究科, 助手 (30335385)
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Keywords | バクテリオファージ / ブラウン運動 / 遺伝子調節 |
Research Abstract |
本研究は,遺伝子調節機構のプロトタイプとしてバクテリオファージλのリアリスティックな計算モデルを構築し,コンピュータ上(in silico)でその遺伝子調節機構を解析することを目的とする.今年度はその準備段階として,比較的小規模で解析の容易な計算モデルの構築とその解析を行った.具体的には以下の通りである. 1.まずこれまでの実験的に得られたデータ(遺伝子調節に関わるタンパク質の種類とその構造,化学反応の平衡定数や反応速度定数,遺伝子配列情報など)を収集・整理し,計算機モデル構築の準備を行った.そしてそれらのデータを基に,比較的小規模で解析の容易な遺伝子調節の計算モデルを構築した. 2.バクテリオファージλの場合,宿主の大腸菌内に存在する遺伝子調節タンパクは200個程度しかなく、熱揺らぎの影響を無視できない.しかし実験的に熱揺らぎの影響を調べるには,技術的問題や対象自身の複雑さなどから非常に困難を伴う.そこで我々は,構築した計算モデルを用い,バクテリオファージの遺伝子調節タンパクが熱揺らぎによってブラウン運動すると仮定し,遺伝子調節機構における熱ゆらぎの影響の同定を行った.またその際に,Gillespieにより提案されたモンテカルロ手法を基に,調節タンパク数の確率的増減が遺伝子発現に与える影響を数値計算するための数値解析的手法を確立した. 3.数値計算の結果,調節タンパクの熱揺らぎ自身は無視できないほどの大きさだが,遺伝子調節機構全体でみると発現タンパク量を劇的に変えるほどの影響力は無いことが初めて定量的に明らかとなった.この結果は遺伝子調節機構内に発現の確率的変動を軽減するなんらかの仕組みが存在することを示唆する.
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Research Products
(1 results)