2003 Fiscal Year Annual Research Report
バクテリオファージのリアリスティックモデルによる遺伝子調節機構の研究
Project/Area Number |
14780637
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
下川 哲也 大阪大学, 基礎工学研究科, 助手 (30335385)
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Keywords | バクテリオファージ / ブラウン運動 / 遺伝子調節 |
Research Abstract |
本研究は,遺伝子調節機構のプロトタイプとしてバクテリオファージλのリアリスティックな計算モデルを構築し,コンピュータ上(in silico)でその遺伝子調節機構を解析することを目的とする.準備段階であった昨年度の結果を踏まえ,本年度は中規模の遺伝子調節機構数理モデルの構築と解析を行った.主に,遺伝子調節機構における熱揺らぎの影響を理論的に解析した.具体的には以下の通りである. 1.昨年度は比較的小規模で解析の容易な遺伝子調節の計算モデルを構築した.本年度はさらにリボソームによる遺伝子情報の翻訳を組み込んだ中規模計算モデルを構築した. 2.遺伝子調節機構における熱揺らぎの影響を明らかにするために,反応速度論に基づいた決定論的モデルとモンテカルロアルゴリズムに基づいた確率論的モデルと2種類の計算モデルを構築し,調節タンパクの個数の時間的変化を両モデルで比較した.その結果,ある条件の下では,決定論的モデルよりも確率論的モデルの方が現実の遺伝子調節機構の振る舞いを正しく表すことが数値計算的・解析的に明らかとなった(現在投稿準備中). 3.昨年度の小規模モデルの解析と異なり,今年度の中規模モデルの解析によると,遺伝子調節機構における熱揺らぎの影響はある条件下では無視できないほど大きいことが明らかとなった.このことから,本研究の最終目的であるリアリスティックなモデルの構築の弘要性が改めて確認された.今後は,計算モデルにおいて熱揺らぎの影響をもっとも受けやすい箇所はどの部分か理論的側面から同定し,最終的にはリアリスティックモデルの構築・解析を通じて,生理学的実験と数理モデルのシミュレーションとの橋渡しを行いたい.
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