2002 Fiscal Year Annual Research Report
温度刺激で高速に薬物を放出する高分子ミセルの分子設計
Project/Area Number |
14780653
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
中山 正道 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (00338980)
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Keywords | 温度応答性高分子 / ドラッグデリバリーシステム / 高分子ミセル / 薬物治療 / ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド) |
Research Abstract |
温度応答性高分子であるポリ(N=イソプロピルアクリルアミド)(PIPAAm)と疎水性高分子鎖(ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ乳酸など)からなるAB型のブロックコポリマーを合成した。このとき、IPAAmに親水性モノマーであるN,N-ジメチルアクリルアミドを共重合することで、生体の体温よりもやや高い約40℃に相転移温度(LCST)を持ち、局所ハイパーサーミアとの併用が可能な分子設計を行なった。次に、疎水性抗ガン剤であるアドリアマイシン(ADR)を効率よくミセル内核に封入した単分散な高分子ミセルを形成する条件を検討し、これに成功した。今後、これらの高分子ミセルを用いて、温度に応答して高速に薬物を放出するための分子設計について検討する。一方、ADR単体と高分子ミセルに内包したものを培養ガン細胞に作用させると、薬物は異なる細胞内移行のメカニズムを示すことを明らかとした。ADR単体の場合、ADRは温度変化に関係なく核のみに迅速に集積する。これに対してミセルに封入したものでは、細胞全体に薬物の分布が確認でき、LCSTを境に高温側では細胞内の薬物濃度が増大するが、低温側では薬物の蓄積が大きく低減することがわかった。また、ADR耐性を持つ細胞に薬物を添加すると、薬物単体の場合では薬物は細胞内に移行しづらいが、ミセルに取り込むことでLCST以上では薬物の細胞内移行が向上することが明らかとなった。以上の結果より、本システムを用いることで、多剤耐性を獲得したガンに対しても有効に薬物を作用させる可能性が示された。
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