2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14F03724
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
植田 今日子 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (70582930)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MCDOWELL Jennifer 東北学院大学, 教養学部, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / こけし / こけしブーム / こけし工人 / 経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究の目的は①東北地方におけるこけし生産の全体的な経済的動向の指標として、(こけしを含む)民芸品の収集と製作におけるコレクターと工芸作家の世代間の変化を比較すること、そして②東日本大震災後、こけし工人(=こけし作家)による新たな形態のこけし(およびこけし関連商品)がどのような事態をもたらしているのか、引き続き参与観察によって明らかにすることである。2011年の3月以来、被災地に少しでもお金を落とそうとする流れも手伝い、こけし製作と売上は拡大した。しかし幾人かのこけし工人は、新形態のこけしやこけし関連商品を、あくまで現代と将来の地域経済のためと位置づけ、チャリティではないと述べている。これら製作物のインパクトや購買者の反応、そして実際の経済的な動向を検証した。さらにこの研究を完遂するために、現代の著名なこけし工人と協同した新形態のこけしの製作者と接触し、インタビューと会合を予定している。すでに石巻市に居住する新形態こけしの製作に取り組む方へのインタビューを実施したが、この接触によって、彼がこれから展開する山形、宮城、福島のこけし工人との協同の機会に、インタビューの実施を約束できた。この調査研究の成果は、(こけしをはじめとする)郷土産品を地元の人びとの物質的なニーズの一部として、そして震災後の経済復調に一定の役割を果たすものとして、より深い文化的な理解を促したことである。わたしの関心はこけし製作における長期的な変化にある。またそれが東北の経済にどのような意味をもつのかである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最近の調査で新たに接触をはじめたこけし工人たちがいる。彼らはいわゆる伝統的な工人からは離れてこけしを製作している。震災後の地域復興の装いのもと、彼らの製作するこけしが現代のこけし文化にどのように貢献しているのかが明らかになりつつある。また、2015年4月に東京こけし協会に入会してふたつの会合に参加し、現在の協会メンバーに5件のインタビューを行った。そして福島県と宮城県で行われる二つの大きなイベントに出席し、こけし製作と収集についての貴重な経済的データを入手することができた。 前年度は、名古屋とワシントンD.C.での人類学系の学会およびサンディエゴでのJapanese Studies Associationで学会発表を行った。いずれの発表機会でもよい反応が得られ、翌年度の大会ではこの大会で出会った研究者たちと日本の民芸と人形に関わる分科会を組織することにつながった。 また昨年度は京都、福島、宮城(白石)の主要なこけしフェスティバルにて調査と参与観察を行うことができた。とりわけ白石でのフェスティバルの調査は、販売後もこけしが会期終了日まで展示されることになっていたため、こけしの販売数、価格、そして作家であるこけし工人の販売数ランキングにいたるまで詳細なデータを入手することができた。 また、この研究ファンドのおかげで東京での調査費を賄うことができ、こけし協会での会合に継続的に参加することができた。多くの新たなこけしコレクターは関東地方に在住しており、なおかつ仙台のこけし協会には属していない。東京では、こけし文化やメディアでの扱われ方、人形の歴史について、詳細な知見に触れることができた。とりわけ東北地方の外側にいる人々、および彼ら/彼女らがこけし製作や現代のコレクターの動向に与える影響について、データを収集することができたのは大きな収穫であった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はとくに宮城県外のこけし工人とコレクターへの聞き取り調査を計画している。県外のこけし工人たちは現在、新しい形態のこけし製作と、これまでにない特徴的な差異化が図られたこけしの製作により、こけし文化に多大な影響を与えつつある。過去六年の間、日本にはこけし収集ブームが生じているが、なるだけ多くの新旧コレクターにインタビューを行い、収集のスタイルの違いや、“石巻こけし”といった新たなこけしが、長いこけし収集の歴史と文脈において、どのように解釈されているのかに注目する予定である。このような新たなデータの開示と論文執筆のために、テープ起こしと翻訳を依頼する予定である。 今後も東北と関東の双方で調査研究を継続予定だが、より重きをおきたいのは実質的に民芸品が消費者にどのようなインパクトを与えたのかということ、そしてこけしという郷土玩具(広くは地元産品)が経済復調のツールとしてどのように活用されたのかということである。
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Research Products
(4 results)