2014 Fiscal Year Annual Research Report
富栄養化とP栄養塩:そのサステイナブル管理のための生態学的戦略
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14F03908
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
沖 陽子 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (30127550)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
AKHTAR Muhammad 岡山大学, 環境生命科学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | リン利用効率 / リン欠乏耐性小麦品種 / リン高感受性小麦品種 / 溶解性リン供給源 / リン欠乏条件下 / リン過剰条件下 / バイオマス / 水生シダ植物Azolla |
Outline of Annual Research Achievements |
リンは生体必須元素の一つで、生体の重要な機能に深く関与する。一方、生物圏におけるリンの循環は閉鎖性のより強い生物学的循環を行っている。陸域生態系において、リンは土壌中に蓄積されており、植物の根によって吸収され、生物体に取り込まれる。この土壌と植物との連繋体でリンの挙動を概観した場合、土壌中で吸着されたリン酸イオンは、植物による利用率が低い。しかし、植物根は有機酸を分泌し、それらと交換して土壌溶液に出てきたリン酸を吸収する能力を持つ。この現象と仕組みを土壌中のリン欠乏に耐性を持ち、少ないリン酸イオンを的確に植物体内で有効化する作物品種を用いて明らかにし、その特性を将来生じるリン欠乏時代に備えて、持続的な作物生産や土壌中の有機態リンの存在の維持管理に活用することが本研究の目的である。その目的を達成するために下記の研究を実施した。 1. 水域のリン過剰条件下: 水生植物によるファイトレメディエーション能力の評価:水生植物Azolla3種を供試して、バイオマス生産量、P蓄積量、及びP除去速度よりP除去能を評価した。その結果、3種共に短期間で高濃度のリンを吸収することが把握され、P除去能の向上に及ぼす微環境を確認した。 2. 陸域のリン過剰・欠乏条件下: P低濃度に対する耐性小麦品種及びP高感受性小麦品種の選抜:溶解性P源を使用し、P低濃度・高濃度条件下で生育反応並びにP利用効率が様々な小麦14品種を供試して相対評価を行い、低濃度Pに対して、P利用効率の高い反応集団、利用効率の低い反応集団、非効率性が明確な集団、非効率性の反応が低い集団に類別化した。各グループの中から、今後追跡可能な特徴的な4品種を選抜した。得られた結果を、米国ハワイで開催された「14th International Symposium for Soil and Plant Analysis 」にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、リン過剰とリン欠乏の両極端の環境条件下で、環境生態学と植物生物学の観点から水域と陸域の両面において、植物と土壌や水界との連携体を単位にリンの動態を明らかにして、将来のリン欠乏時期に備えることを目的としている。本年度の計画は、基礎的な事項を把握することにあった。その意味では、水生植物のリン固定能力の把握、リンに対する反応の異なる4グループに小麦14品種を類別し、各グループより特徴のある品種を選抜し、今後の研究の方向性を堅固にしたことは評価できる。得られた結果は国際シンポジウムで発表し討議する機会を得た。現在、発表論文数は少ないが、3編は投稿中で、5編は論文作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究結果を基に下記の項目を解明し、研究成果をまとめる。 まず、各特性から類別化された小麦品種の自然環境下における砂耕及び土耕栽培における再現性の評価する。次に、遅効性の可溶性PにおけるP可溶化やP獲得を含めた根部介在メカニズムを誘引するPストレスを証明する。さらに、遅効性の可溶性Ca-Pの不可溶性に関するH+イオン流出の関与とH+ポンプやプラズマ膜のH+ATPase活性の適応を相対評価する。一方、PストレスにおけるP再流動及びPi吸収に関するパラメータの推定も必要となる。最後に、水域及び陸域における植物のP収着/非収着の動態及び一連のP細分化/隔離の工程を解明し、リン回収戦略を検討する。 なお、特徴ある品種のDNA解析を他の研究室と共同で実施することも検討している。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Phosphorus stress induced variations in growth behavior and P-efficiency among Brassica cultivars grown with sparingly soluble P-sources.2014
Author(s)
Akhtar, M. S., Oki, Y., Nishigaki, M., Adachi, T., Nakashima, Y., Nakamoto, Y. and Hartwig, C.
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Journal Title
Communications in Soil Science and Plant Analysis
Volume: 45(15)
Pages: 1995-2017
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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