2014 Fiscal Year Annual Research Report
雇用社会の変化と労働市場政策法の在り方に関する日中比較研究
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14F03911
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山下 昇 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (60352118)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ZOU Tingyun 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 労働市場の法政策 / 労働者派遣 / 有期労働契約 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の課題は、近年における雇用社会の変化を背景に生じた労働法(特にそのうちの「労働市場法」分野)の変容及びその特質を明らかにしたうえで、日本及び中国におけるこれからの労働市場の法政策の方向性とその理論的基盤を検討しようとすることである。 本年度は研究初年度であり、資料の収集とともに、上記研究課題に関するこれまでの到達点の確認を中心に作業を行いつつ、主に以下の2つの課題に取り組んできた。 第1に、有期労働契約に関する法規制のあり方である。日本における有期雇用について、その利用に関する実態を明らかにし、法規制状況やその背景を検討したうで、日本における有期労働契約に関する法規制の展望を示した。これについて2015年3月に東京で行われたアジア労働法学会において発表した。 第2に、労働者派遣の法的位置づけ及び法規制の在り方に関するものである。労働者派遣における契約構造に着目するとの発想が乏しいことを明らかにしたうえで、法規制のあり方を検討した。これについて5月に行われる日本労働法学会において報告する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は研究初年度であるため、資料の収集や研究課題に関する到達点の確認、及び今後深めるべき論点の整理を中心に行ってきた。このため、具体的に検討したテーマの数は必ずしも多くないが、日本で、既に先行して法整備が進められている有期労働契約の法規制の検討を行うとともに、現状の労働者派遣法の検討を行ってきた。こうした研究を通じて、研究課題自体への理解を深めることができ、2年度目の研究の基礎を作ることができた。また、現在、国会で、日本の労働者派遣法の改正が議論されており、こうした議論動向にも中止しながら、研究を進めている。 以上のようなことから、現在までの達成度について「おおむね順調」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究過程において、今後深めるべき課題として、次の課題が浮上した。第1に、「労働移動の円滑化」のための法制度の展開、及び当該制度と解雇規制や「正社員改革」との関係の問題である。第2に、労働者像及び雇用形態の多様化を背景とした広義の求職者支援制度(市場への参入、訓練、補償などを含む)のあり方の問題である。 そして、これらの課題に通底する理論的問題として、第1に、労働法において「市場」がいかに捉えられているか、第2に、労働市場の法政策の理論的基盤とされてきた「勤労の権利・義務」がいかなる具体的内容を持っているのかについての再考が考えられる。第3に、広義の求職者支援制度にかかわる新しい論点として、「労働契約外」の雇用をいかに位置付け、理論的基盤を与えるべきかが考えられる。これらの点について、両国における現実の制度展開を踏まえた検討を深めていきたい。
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Research Products
(3 results)