2014 Fiscal Year Annual Research Report
界面アニソトロピーの戦略的制御による分子認識場の構築
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14F03912
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
伊原 博隆 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (10151648)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MALLIK Abul Khayer 熊本大学, 自然科学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 液体クロマトグラフィ / 多重相互作用 / 超分子ゲル / HILIC |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、多重相互作用点を集積することを基本コンセプトとした分離機能材料の開発を行い、液体クロマトグラフィへの応用展開を目指す。下記に、当該年度の代表的な研究成果を報告する。 (1)逆相クロマトグラフィのために新しい固定相を開発した。具体的には、L-リシンをベースにアミド結合を介して長鎖アルキル鎖を導入した物質を作製した。同物質は有機溶媒中で配向集合し、繊維状ナノ構造化することによって溶液をゲルさせる能力があることを確認した。同物質を多孔質シリカ粒子に導入し、液体クロマトグラフィ用分離剤として適用した。結果として、多環芳香族類に対して著しく高い分子形状識別能を示すことが明らかになった。おそらく、リシン誘導体中に存在する複数のアミド結合が分子間水素結合帯を形成しながら、シリカ上で高度に配向した状態を形成した有機相を形成しているためと推察される。 (2)液体クロマトグラフィにおいて新しいタイプの両親媒性有機相を提供するため、官能基としてのβ-アラニル基に注目し、シリカとオクタデシル基のスペーサーとして活用した。具体的には、β-アラニル基を1個、2個、3個のものを作製し、比較検討した。シリカへの固定化状態については、固体NMRや懸濁NMR、視差走査熱量分析、FT-IRなどにより調査した。結果として、逆相モードおよび親水性相互作用モードのどちらにおいても高い分子形状識別能を発揮することが明らかになった。β-アラニル基の繰り返し構造化により、3分子間水素結合を促進するアミド結合が1次元的に配列し、これが有機相の秩序化を促進したためと推測される。 (3)非イオン性かつ親水性の高い有機相を開発するため、2-vinyl oxazolineの構造に着目し、同モノマーの多孔質シリカ上でのグラフト重合を実施した。結果として、高い選択性が極性溶媒および非極性溶媒の両方で発揮されることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、新しい有機相の開発に主眼を置き、リシンをベースにした超分子ゲル形成有機相、非イオン性かつ親水性のポリマー有機相、さらには複数の水素結合促進基を導入した有機相の3種類を合成した。それぞれ液体クロマトグラフィにおいて特異な選択性を示した。応用研究については今後の展開となるが、基本成果はすでに3報の論文として報告済みであり、ほぼ当初目標を達成していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度新たに作製したL-リシン誘導体を分子配向場とするHPLC用分離剤は、多環芳香族類に対する分子形状識別能に対しては高い数値が示されたものの、光学分割については限定的な選択性のみが得られている。そのため、本年度は、光学分割を中心目標に据えた立体選択性の向上を目指し、下記のような研究目標を立てている。 (1)L-リシン誘導体による選択性向上の根底には、カルボニル基の配向が関与しているものと推察されるが、分子配向をさらに促進するためには、シリカへの固定化方法から再検討する必要がある。そこで、次年度は、固定化方法の改善から着手する。具体的には、スペーサーの柔軟性や配向性を考慮した分子設計を行い、固体NMR、FT-IRシリカ、振動CDスペクトル等によって評価する。L-リシン間の分子間配向に関する知見と光学分割能に対する相関性を調査し、必要に応じて分子設計を再考する。 (2)長鎖アルキル基の配向により分子配向が促進され、結果として高い分子形状識別能を発現させることができる。その一例が、本研究室で開発したポリ(オクタデシルアクリレート)をシリカにグラフト化したHPLC用分離剤である。同有機相は、キラル中心を有しないが、結晶相を形成する温度で高い分子形状識別能を発揮するだけでなく、芳香環を有するキラルな試薬によってラベル化したジアステレオマーに対して高い選択性を発揮する。本研究では、この有機相の選択性をさらに向上させることを目的として、重合時に発生する立体規則性や固定化密度を制御し、ジアステレオマー分割能との関係を調査する。具体的には、固定化反応を、超臨界法を含む高圧化で実施し、オクタデシル基の配向状態を固体NMR等により評価する。また、キラルのラベル化剤としては(R)- および (S)-(1,1’-bi-2-naphthol)を中心に検討し、配向状態と選択性との相関性を調査する。
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Research Products
(7 results)