2014 Fiscal Year Annual Research Report
西部北太平洋における海洋エアロゾルの吸湿特性の長期観測
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14F04017
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
河村 公隆 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (70201449)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BOREDDY Reddy 北海道大学, 低温科学研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | エアロゾル / 吸湿特性 / 吸湿成長率 / シュウ酸 / シュウ酸カルシウム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、西部北太平洋エアロゾルの吸湿特性の長期変動を解明し、過去20年間のエアロゾルの吸湿成長率(Gf)と化学組成の関係を解明することを大きな目的とする。こうした解析をとおして、エアロゾルの化学組成がその吸湿成長にどのような影響を及ぼしているのかを明らかにする。一般には外洋でのエアロゾルの吸湿特性は、海塩(NaCl)によって支配されるため粒子の成長はその潮解点(相対湿度75%)までは抑えられるが、それ以降はGfが急増する。人為活動の影響の強い海域では、エアロゾルのGfは硫酸・硝酸や有機物の影響を受けることが考えられる(Boreddy et al., JGR,2014)。父島で採取したエアロゾル試料のGfを測定したところ、シュウ酸など有機物が増加することによりGfは著しく減少することを見いだした。シュウ酸カルシウムが形成されていることが、有機物と無機イオンの測定からも支持された。この結果は、アメリカ地球物理学会のJ. Geophys. Res.誌に発表された。 大気中に存在する有機エアロゾルの化学組成と微粒子の吸湿特性との関係を研究した結果、従来の一般的知見とは異なり、有機物が無機物と相互作用することにより不溶性の塩を形成することによって微粒子の吸湿特性を下げることがあることを発見した。この研究は、従来の水溶性有機エアロゾルの吸湿特性像に対して新たな解釈が必要であることを提案した。本研究の結果は、新たな段階に達成しており今後の更なる研究の必要性が明らかとなった。また、Boreddy氏は、アフリカのバイオマス燃焼の影響を強く受けたエアロゾルについても研究をおこない、バイオマス燃焼生成有機物が微粒子の吸湿特性の増加に寄与することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大気微粒子では、有機物がその質量の数十%(最大で90%)を占めているが、その大部分は水溶性である。そのため有機物は高い吸湿特性、雲凝結核(CCN)活性を示し、CCNとして雲・雪の生成に関与するなど気候学的に重要な役割を果たしている可能性が高い。本研究では、大気中に存在する有機エアロゾルの化学組成と微粒子の吸湿特性との関係を研究した結果、従来の一般的知見とは異なり、有機物が無機物と相互作用することにより不溶性の塩を形成することによって微粒子の吸湿特性を下げることがあることを発見した。この研究は、従来の水溶性有機エアロゾルの吸湿特性像に対して新たな解釈が必要であることを提案した。本研究の結果は、新たな段階に達成しており今後の更なる研究の必要性が明らかとなった。また、Boreddy氏は、アフリカのバイオマス燃焼の影響を強く受けたエアロゾルについても研究をおこない、バイオマス燃焼生成有機物が微粒子の吸湿特性の増加に寄与することを明らかにした。Boreddy氏の現在までの研究の達成度は概ね良好であると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
海洋エアロゾルに加えて、インドの主要な都市で採取するエアロゾル試料の吸湿特性も明らかにする予定である。本研究では、インドの大気汚染の影響を強く受けたベンガル湾で採取した海洋エアロゾルを分析し、その吸湿特性との関係も解析する予定である。インド洋におけるエアロゾルの吸湿特性の研究はこれまでに行われておらず、本研究の実施によってその実体が初めて明らかにされるであろう。 本研究を実施することにより得られる結果は、二酸化炭素の増大による地球温暖化が進行する中でエアロゾル組成の変化とその結果もたらされる微粒子のCCN活性の変化が今後どのような様式で気候変化に反映されるかを予測する上で基礎的な情報を提供するものであり、大きな大気科学的意義がある。低い相対湿度でも大気微粒子の吸湿特性(水蒸気の保持能力)は高いまま維持されると考えられる。こうした大気科学的効果の結果、比較的低い相対湿度でもエアロゾルの含水率は増大し、どんよりとした大気が出現すると予想される。今後、大気汚染が極めて深刻となっている中国の大気エアロゾルについても吸湿特性を測定していく予定である。 今後の研究では、バルクエアロゾルとともに、粒径別に採取したエアロゾル試料を用いて、粒子の吸湿成長率が粒径サイズとどのような関係にあるかを明らかにする。そのために、父島および沖縄辺戸岬にてミドルボリュームインパクターを用いて採取した(する)粒径別エアロゾルの吸湿特性とその化学組成を明らかにする。また、粒径別吸湿特性の季節的特徴も明らかにする。
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Research Products
(10 results)