2014 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属化合物における量子スピン液体状態の単結晶を用いた実験的解明
Project/Area Number |
14F04026
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中辻 知 東京大学, 物性研究所, 准教授 (70362431)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
TIAN Zhaoming 東京大学, 物性研究所, 外国人特別研究員
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
|
Keywords | 遷移金属酸化物 / スピン液体 / トポロジカル量子相 / イリジウム酸化物 / スピン・軌道相互作用 / 金属・絶縁体転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの物性研究は、電子相関、あるいは、スピン軌道相互作用のどちらか一方を有する物質に集中したものであり、強い電子相関と強いスピン軌道相互作用の両者を兼ね備えた電子系は未開拓であった。両者を備えた物質群においては新奇なトポロジカル量子相が理論的に予想されることからも、次なるフロンティアとして世界的に大きく注目されている。本研究においては、電子相関とスピン軌道相互作用の両者が同程度のエネルギースケールを持って競合する遷移金属酸化物、特にイリジウム酸化物を研究対象として取り上げた。その中でも、パイロクロア型イリジウム酸化物を対象として、そこで現れる量子カイラルスピン液体状態、ワイル半金属相などの新しいトポロジカル量子相の解明を目指し、本年度は純良単結晶の育成に取り組んだ。パイロクロア型イリジウム酸化物は、その組成、酸素分圧、焼成温度等に応じて、単結晶の質が大きく変化することが知られている。これらのパラメーターを精度よく調整することで、ワイル半金属を実現する母体である、フェルミノードを持つ半金属状態を実現するPr2Ir2O7の純良単結晶の育成に成功した。その低温比熱の測定から、純良な結晶では磁気秩序が存在せずスピン液体状態が実現すること、また、その化学量論比の制御によりその低温での磁気秩序が現れる可能性を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パイロクロア型イリジウム酸化物は強相関電子系におけるスピン軌道相互作用の効果を明らかにできる恰好の舞台を提供している。しかし、その純良単結晶の育成は、難しく、世界的に多くのグループが取り組んできたにも関わらず、成功例はほとんどない。さらに、成功したとしても、これまで物性の試料依存性など、大きな問題が存在していた。今回、Tian氏と協力して、我々はその問題を化学的知見に基づき整理することによって克服し、新しい単結晶育成手法を開発した。今後、純良単結晶の育成により物性測定が初めて可能になるという意味で大きな前進である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今回開発した単結晶育成手法に基づき、Pr2Ir2O7のみならず、Nd2Ir2O7の純良単結晶試料の育成を進める。これらの系における金属・絶縁体転移近傍に現れる、量子カイラルスピン液体状態、ワイル半金属相などの新しい量子現象の性質を明らかにするために、育成した単結晶を用いて、電気抵抗、ホール抵抗、磁化率、比熱、磁歪などの基礎物性の多角的測定を進める。さらには、高磁場測定を行うことで、量子振動、磁場誘起量子相転移の可能性などを追究し、トポロジカル量子相を実現する電子状態の知見を得る。
|
Research Products
(10 results)
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] “Quantum Melting of Spin Ice”2015
Author(s)
S. Nakatsuji
Organizer
Edgar Luscher Seminar 2015 “Neues aus der Festkorperphysik”
Place of Presentation
Hotel-Sport Klosters/Schweiz, Switzerland
Year and Date
2015-02-07 – 2015-02-13
Invited
-
-
-