2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14F04070
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井原 泰雄 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (90376533)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LEE Sangheon 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 進化 / 言語進化 / 系統樹分析 / アイヌ語 / 日本語族 / 異所的種分化 / 言語多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の実施した研究からは概ね二つの成果を得ることが出来た。一つ目は、日本列島の言葉、つまり日本語族が、地域によって近隣の言葉とお互いに理解し合えないほど異なっている原因の一つとして「海による地理的隔離」が影響している、という以前の研究結果に加え、同じような現象が日本列島北部のアイヌ語においても起きていることを確認したことである。この知見は更に、言語間の系統的な近似性を統制しても、物理的な距離の近似性を考慮しても、統計的に意味のある結果であることをも確認した。この研究成果は、言語進化における「異所的種分化」のような現象がより広い範囲に対して一般化できるものである可能性を示す。二つ目の成果は、朝鮮語族の言語を分析し、朝鮮半島における言語進化の歴史は「垂直伝達」より「水平伝達」の影響を強く受けていることを示す結果を見出したことである。朝鮮語族は、その話者達が遺伝的には中国大陸や日本列島の人々と非常に類似しているのにもかかわらず、言語的には両者とまったく異なっていることで知られているが、朝鮮語族の進化における多大な水平伝達の痕跡はこの言語的不一致の現象を説明できる一つの手がかりになり得ると思われる。また、これまで言語の進化における水平伝達を定量的に分析して報告した研究は極めて少ないため、朝鮮語族の研究結果は言語進化という大きな現象のある独特な一面を探求出来る興味深い事例研究になり得ると予測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した語彙データの電子化は計画通りに進み、即時分析可能な状態にした上、その中から朝鮮語族に関しては更に複数の文献を用いてデータの補完を行い、分析を行った。ツングース語族、モンゴル語族、テュルク語族といったその他のアジア諸言語の言語データに関しても、語彙データに加え文法データを入手し、現在処理を行っている。従って、現在までの達成度は概ね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はアジア諸言語の語彙データに文法のデータを合わせ、それぞれの言語の話者の生物進化と照らし合わせながら、系統地理分析、クラスター分析、地理的障壁を調べる作業を行い、より精密かつ大規模な分析を行う。
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Research Products
(2 results)