2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14F04095
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
杉山 清佳 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (10360570)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HOU Xubin 新潟大学, 医歯学系, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 臨界期 / 眼優位性可塑性 / アクチン細胞骨格 / Otx2 / 抑制性介在ニューロン |
Outline of Annual Research Achievements |
生後間もない脳が経験に依存して機能的な神経回路の形成する臨界期がある。臨界期を制御する数少ない因子の1つとして、ホメオ蛋白質Otx2が知られている。Otx2は視覚野のParvalbumin発現細胞(PV細胞)に運ばれ、PV細胞を取り囲む細胞外基質(PNN)に結合して細胞内に取込まれた後、PV細胞の成熟を促すことで臨界期を制御する。一連の研究から、Otx2と細胞外基質の相互作用により生涯にわたり臨界期が制御されることが明らかになった。一方で、Otx2と細胞外基質がPV細胞の機能成熟を支える分子メカニズムがまだわかっていない。本年度は、アクチン重合の促進に不可欠なCoactosinに焦点を当て、Otx2の下流因子であるCoactosinのPV細胞における役割の解析を行った。 まず、電気生理学的な解析から、研究室で作成したCoactosin nullやPV細胞特異的にKO されるCoactosin flox / PV-Creマウスでは、臨界期が活性化されないことがわかってきている。また、Coactosin蛋白質は細胞外基質(PNN)に囲まれた細胞体近傍に分布するのが観察され、CoactosinがF-アクチンとともに細胞外基質の裏打ち構造として機能することが推測される。Coactosin null マウスではVGlut2染色の減少とともに、細胞外基質(PNN)の構築が未成熟であることが分かってきている。総合して考えると、CoactosinはPV細胞に入力するシナプスの形成を促進し、PV細胞の成熟に関与する可能性がある。すなわち、Coactosinがアクチン骨格の再編を促し、膜分子やシナプスの形成に関与すると推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、Coactosinを手掛かりに、Otx2/PNN がPV細胞を成熟させ、臨界期を制御するメカニズムを明らかにすることを目的にする。特に本年度は、アクチン細胞骨格の再編が、①臨界期に関与するのか、②シナプス形成とPV細胞の成熟に関与するのか、③細胞外基質構造の発達を促進するのか、について解析を行ってきた。下記に示すように、各設定項目において目的をおおむね達成した。 これまでに、視覚誘発電位記録法(VEPs) を用いてCoactosin nullマウスやPV細胞特異的なCoactosin KOマウスでは臨界期が誘導されないことがわかっている①。また、視覚野においては、細胞外基質(PNN)の構築が未成熟であり、CoactosinがF-アクチンとともに細胞外基質の裏打ち構造として機能するという作業仮説通りの結果となった②。さらに、シナプスや膜分子の局在の異常などを解析し、PV細胞の機能成熟を支える分子メカニズムの詳細を検討している③。来年度に向けて、Coactosinや細胞骨格関連分子に対する翻訳制御メカニズムを明らかにするために、すでにRIP-seq (RNA 免疫沈降法次世代シークエンス解析)の条件検討を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果をもとに、引き続き、Coactosinの臨界期のおける機能を解析する。PV細胞特異的なCoactosin KOマウスにおいてシナプス前終末、シナプス後膜のマーカー分子を検出し、PV細胞へ投射するシナプスの形成機序を解析する。また臨界期には、Coactosinを介したスパインの形態変化が起こりやすい可能性があることから、興奮性神経細胞特異的なKO マウスの臨界期異常の有無を確認し、KOマウスを用いてゴルジ染色を行い、スパインの形態変化を解析する。以上により、Coactosinの機能についての理解を深める。 また今年度は、生後の脳に見られる翻訳制御機構が、臨界期にも影響を与えるのか検討する。翻訳制御をうけるmRNAをRIP-seq (RNA 免疫沈降法次世代シークエンス解析)を用いて、網羅的に解析する。特に、Coactosinのほかに翻訳制御されうる細胞骨格関連分子があるのか、得られた遺伝子情報をカテゴリー検索し、翻訳制御をうける遺伝子群を解明する。この際、臨界期が誘導された野生型と、臨界期の無いOtx2 KOマウスとの間でmRNA量を比較することで、臨界期に関与するmRNAを探索することができる。
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Research Products
(6 results)