2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14F04315
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
河村 公隆 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (70201449)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
DESHMUKH Dhananjay 北海道大学, 低温科学研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | エアロゾル / ジカルボン酸 / 粒径分布 / 不飽和脂肪酸 / インドモンスーン |
Outline of Annual Research Achievements |
Desmukh氏は、沖縄辺戸岬で採取した粒径別ジカルボン酸のデータ解析を行った。粒径別に採取した画分に(<0.43, 0.43-0.65, 0.65-1.1, 1.1-2.1, 2.1-3.3, 3.3-4.7, 4.7-7, 7-11.3, >11.3 μm)、ジカルボン酸(C2-C12)、オメガオキソ酸(C2-C9)、ピルビン酸、α-ジカルボニル(グリオギザール、メチルグリオギザール)を検出した。シュウ酸が最も優位なジカルボン酸であることがわかった(C2, 159-236 ng m-3)。また、ジカルボン酸は微細粒子(0.65 - 2.1 μm)に濃集されていることが明らかとなった。一方、不飽和脂肪酸の酸化によって生成するアゼライン酸(C9)は、粗大粒子(3-5 μm)にも濃度の最大を示した。このことは不飽和脂肪酸の二重結合が海洋エアロゾル表面にて酸化されていることを示唆した。この研究生は、論文として完成し、J. Geophys. Res.-Atmospehresに投稿し、現在査読中である。 また、同氏は、本人がインドで年間を通して採取した粒径別エアロゾル試料を河村研究室で分析し、ジカルボン酸・オキソカルボン酸・α-ジカルボニルを検出した。微細粒子画分に高い濃度のジカルボン酸などが検出された。これらの分布は、インドモンスーンのパターンで大きく異なることがわかった。現在データの解析をほぼ終わり、論文執筆は最終段階に来ており、近日中に国際誌に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
沖縄辺戸岬および南インドで採取したエアロゾル試料から、純水を用いて分離した低分子ジカルボン酸とオメガオキソ酸、グリオキサールなどをBF3/butanolを用いてエステル・アセタールに誘導体化したのち、これら誘導体をガスクロマトグラフ(GC), GC/質量分析計(MS)を用いて測定した。この方法を沖縄辺戸岬および南インドにて粒径別に採取したエアロゾル試料に適用し、ジカルボン酸の分子分布を解析した。また、別途、エアロゾル試料の化学分析(主要イオン、水溶性炭素)を実施し、有機物の粒径分布を無機イオン・水溶性炭素との関係で説明した。これまでに研究例の少なかったインドにおいてエアロゾルの水溶性有機物の組成を解明したが、この研究課題は、大気組成を大きく規定する因子としてインドで問題とバイオマス燃焼の影響を評価するためにも重要である。現在までのDesmukh氏の研究の達成度は概ね良好であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、粒径別に採取したエアロゾル試料を用いて、化学組成と微粒子の吸湿成長率が粒径サイズとどのような関係にあるかを明らかにする。そのために、父島および沖縄辺戸岬にてミドルボリュームインパクターを用いて採取した(する)粒径別エアロゾルの化学組成を明らかにし、研究室内の別の博士研究員による吸湿特性の測定結果を比較する。また、ジカルボン酸・オキソカルボン酸・ジカルボニルの分布の粒径別特性を明らかにし同時に季節的変化も明らかにする。 更に、本研究で分離したジカルボン酸類の安定炭素同位体比(δ13C)をGC/IRMSを用いて測定する予定である。この方法で得られたデータは、ジカルボン酸の起源と光化学的変質(Aging)の情報を提供してくれる。そのため、濃度情報に加えて、有機エアロゾルの起源や光化学的変質の程度をエアロゾルの粒径サイズ毎に評価することが可能となる。こうした研究は、これまでアジア域で実施された例はなく、本研究を実施することにより、水溶性有機エアロゾルの起源に関する新たな情報を入手できると期待できる。
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Research Products
(10 results)