2014 Fiscal Year Annual Research Report
多数の金属イオンでシクロメタル化された非平面芳香族炭化水素の超分子化学
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14F04338
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塩谷 光彦 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60187333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
TOPOLINSKI Berit 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | コラニュレン / 非平面芳香族炭化水素 / 多核金属錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
非平面芳香族炭化水素であるコラニュレン (C20H10) などのバッキーボールは、特徴的な湾曲構造に由来する興味深い構造と性質を示す。本研究課題では、Topolinski氏と受入研究者が共同して研究を進めることにより、コラニュレンなどの非平面芳香族炭化水素の周縁炭素上を多数金属イオンでシクロメタル化することにより、その基礎的性質とともに超分子化学的な特性を明らかにすることを目指している。具体的には、コラニュレン周縁部がピリミジンやチアゾールなどの配位環で多数置換された複数のコラニュレン配位子を合成する。例えば、コラニュレンの1,3,5,7,9位が2-ピリミジンで置換された1,3,5,7,9-penta(pyrimidin-2-yl)corannuleneを合成し、コラニュレン周縁部の五カ所でシクロメタル化された五核コラニュレン金属錯体の合成を試みた。NMR測定により、白金イオンやパラジウムイオンとの錯体形成は確認できたが、配位子の溶解性に問題があったため、分離精製が困難であった。そこで、ピリミジン環に長鎖アルキル基を導入し、この配位子と白金イオンあるいはパラジウムイオンとの錯体形成を行ったところ、目的物の対象性に合うNMRスペクトルが得られた。現在、分離精製を検討している。また、ピリミジンの代わりに金属イオンとの結合能が高いチアゾール環の導入した配位子も合成したが、同様に溶解性に問題があり、現在溶解性を向上させるための置換基の導入を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コラニュレンの周縁部の五箇所にハロゲン原子を導入する合成法が確立したため、様々なタイプの金属配位子を導入することが可能になった。実際、ピリミジン、チアゾールなど数種類の架橋配位子を導入することに成功し、これらの構造はNMRや質量分析測定などで決定した。しかしながら、それらのほとんどが一般的な有機溶媒への溶解度が低く、錯体形成は進行するものの非常に遅いことが判明した。また、コラニュレンは高価で入手が容易でないため、コラニュレンの部分構造にほぼ等価なモデル化合物を合成し、金属錯体形成の反応条件検討に用いている。この配位子と白金イオンあるいはパラジウムイオンとの錯体形成についても、反応条件の最適化を検討中である。昨年の10月にスタートして半年間経つが、この短期間に、配位子の合成方針やモデル化合物を用いた錯体形成反応の条件がほぼ固まったので、研究が順調に進展していると言ってよいだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は、コラニュレンにヘテロ原子を含んだ配位子環を複数導入することによりコラニュレン自身の会合が抑えられ、溶解性が向上すると期待したが、金属錯体の合成や分離精製のためには、溶解性をさらに上げるための分子設計が必要になった。そこで、配位子環に長鎖アルキル鎖やグリコール鎖を、金属錯体形成に支障のない位置に導入して金属錯体の合成を検討中である。コラニュレンの周縁部に5個の金属イオンと5個の架橋配位子が交互に環状に配列する構造を期待しているが、この環状連結の効果だけでなく、コラニュレンのπ平面との共役性や、コラニュレンの環反転運動との関係を明らかにしていきたい。また、金属イオンの種類として、平面4配位を好む遷移金属イオンから検討を始めたが、6配位型を取り得る他の遷移金属イオンも試みる予定である。目的の環状五核錯体は、錯体形成に伴ってすべての配位子環がコラニュレン平面とほぼ平行になるため、全体の構造は平面性が高い。コラニュレンの自己会合の性質に基づく五核錯体の集積化にも興味が持たれるので、基板上で会合様式を観察することも必要である。金属間の相互作用やπスタックが導電性に及ぼす効果も検討する予定である。
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