2014 Fiscal Year Annual Research Report
多座配位子を有するパラダサイクルの合成と触媒への応用
Project/Area Number |
14F04343
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
真島 和志 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (70159143)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
JENA Himanshu 大阪大学, 基礎工学研究科, 外国人特別研究員
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | シクロメタル化 / 金属ナノ粒子 / 還元的カップリング / 二酸化炭素固定化 / 二酸化炭素 |
Outline of Annual Research Achievements |
新しい金属触媒反応の開発には触媒分子の独創的かつ合理的な設計が最も重要な要素であり、これまでに様々な構造の配位子が合成されてきた。また、新規な配位子の設計により得られる金属錯体は、しばしばこれまで用いられてきた合成反応ルートを一変しうる分子変換反応を可能とすることから、基礎と実用の両面から活発な研究が進んでいる。 受入れ研究者が最近見出したシクロメタル化部分を配位子とするイリジウム錯体がピリジン誘導体の炭素-水素結合活性化による脱水素シリル化反応の触媒として作用する知見に基づき、シクロメタル化錯体を用いた反応開発を進めた結果、アルコール類の脱水素酸化反応が速やかに進行することが分かった。しかし、本アルコール酸化反応の高活性化を企図して種々検討を行ったところ、当初の予想に反して、シクロメタル化錯体とアルコールの反応によりシクロメタル化部位が解離し、その後生成する微量のイリジウム金属粒子が脱水素アルコール酸化反応に触媒活性を示すことが分かった。 このようにシクロメタル化錯体が金属粒子の前駆体として作用していることから、金属ナノ粒子そのものが示す触媒反応特性に着目した研究内容にも着手した。中でも、受入れ研究者が最近見出した後周期遷移金属ナノ粒子発生法を用いた炭素-炭素結合形成反応や二酸化炭素固定化反応について種々検討を行った結果、ハロゲン化アリールを基質とした還元的カップリング反応においてニッケルナノ粒子が高い触媒活性を示すことを見出した。また、同様の触媒系が二酸化炭素の固定化についても有効であることが明らかとなりつつある。ニッケルナノ粒子触媒はこれまで、ある特殊な高分子保護剤を用いた場合にのみ炭素-炭素結合形成反応の触媒として作用することが知られており、本研究成果は高活性なニッケルナノ粒子触媒の創出につながる極めて重要な知見である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の遂行において、当初予想していたシクロメタル化配位子による反応性制御、と異なり、シクロメタル化錯体を原料としたナノ粒子形成による触媒能の発見、に基づいて、現在では金属ナノ粒子を用いたカップリング反応開発に着手している。本研究内容は、シクロメタル化配位子の一つの特徴としての「触媒反応中での解離の容易さ」に基づいた研究であるが、シクロメタル化配位子による反応制御、には現在のところ至っていない。 そこで、今後はナノ粒子の反応性制御の一つとして、ナノ粒子自体に配位が可能な種々のキレート配位子、ならびに、シクロメタル化が可能な配位子前駆体を加えることでナノ粒子からより活性な化学種を発生させる新たな方法論の開発を進める。従来では単核のシクロメタル化錯体の触媒活性のみが調べられてきたことから、シクロメタル化によるナノ粒子から活性化学種の切り出しを行うことで、これまでにない複核シクロメタル化錯体触媒の開発に向けて研究を進める。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度に見出した金属ナノ粒子触媒系のさらなる発展として、シクロメタル化配位子前駆体の添加による金属ナノ粒子へのシクロメタル化反応を利用した活性を示す金属複核種の発生と得られる化学種の同定並びに触媒反応への利用を検討する。 従来の金属ナノ粒子触媒の反応性の制御や安定化には高分子保護剤が用いられており、実際の反応活性種に必要な金属核数や高い触媒活性を示す場合の構造は明らかにされてこなかった。一方、単核の金属原子に対するシクロメタル化反応は古くから研究が進んでおり、反応により得られる錯体の構造は多くの解析手法により明らかにされている。そこで我々は、金属ナノ粒子における配位環境の制御として、単核錯体において多く用いられているシクロメタル化反応を活用し、生成する化学種を用いた様々なカップリング反応への展開を計画している。具体的には、ニッケルナノ粒子触媒反応に対して、シクロメタル化反応が可能なハロアニソール誘導体やフェニルピリジン誘導体を添加し、ナノ粒子のシクロメタル化によるサブナノオーダー(金属クラスターオーダー)の粒子を発生させることで、従来のニッケルナノ粒子触媒の触媒活性を凌駕するシクロメタル化クラスター錯体を合成する。前年度に合成に成功した他の金属ナノ粒子(とくに卑金属ナノ粒子)に対してもシクロメタル化配位子前駆体を添加することで、高活性なシクロメタル化金属クラスター錯体触媒の合成を検討する。本手法でナノ粒子からシクロメタル化反応によって切り出すことで生成すると考えられるシクロメタル化クラスター錯体を研究対象として本年度は研究を進める。
|
Research Products
(1 results)