2015 Fiscal Year Annual Research Report
細胞質DNA受容体を標的としたDNAアジュバントのナノ粒子による作用制御
Project/Area Number |
14F04353
|
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
花方 信孝 国立研究開発法人物質・材料研究機構, ナノテクノロジー融合ステーション, ステーション長 (10302796)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
OH HWAN HEE 国立研究開発法人物質・材料研究機構, ナノテクノロジー融合ステーション, 外国人特別研究員
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | DNA医薬 / ナノメディシン / デリバリー / 免疫刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は免疫細胞の細胞質DNA受容体を標的としたDNAナノメディシンを開発することを目的とする。細胞質DNA受容体は2本鎖DNAを認識し、I型IFNを誘導する。誘導されたI型IFNによってメモリー機能を有する細胞傷害性T細胞が活性化されるため、2本鎖DNAはアジュバントとして感染症の治療や癌の免疫療法に応用することができる。しかしながら、2本鎖DNAは体内および細胞内のDNA分解酵素で分解されてしまうため直接の投与では効果が期待できない。DNA分解酵素に対する耐性能を付与するホスホロチオエート化は、細胞質DNA受容体による2本鎖DNAの認識を阻害するので使用することはできない。我々はカチオン性ナノ粒子の表面に2本鎖DNAを静電相互作用で結合させると、DNA分解酵素に耐性になることを見出し、2本鎖DNAとナノ粒子の複合化アジュバントに関して検討した。昨年度までは、リン脂質の親水性領域に1本鎖DNAの一端を結合させた後にリポソームを形成させ、補する1本鎖DNAによりリポソーム上に2本鎖DNAを生やしたナノ粒子の合成を試みたが、回収率が低く、実用的ではないことが判明した。 そこで方針を変更し、リン酸カルシウムナノ粒子の表面に2本鎖DNAを結合させた複合体を合成した。リン酸カルシウムのナノ粒子は結晶性の高い水酸アパタイト粒子と結晶性の低いアモルファス状粒子を調製し、それぞれの表面に2本鎖DNAを結合させた。これらの複合体でマクロファージを刺激したところ、結晶性の高い水酸アパタイト粒子ではI型IFNの誘導が認められなかったのに対し、アモルファス状の粒子ではI型IFNが高いレベルで誘導された。これは、アモルファス状粒子がエンドソームに取り込まれた後、溶解することによって内部浸透圧が上昇し、エンドソームから脱出した2本鎖DNAが細胞質DNA受容体と相互作用するためであることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の計画ではリン脂質の親水性部位にアジュバントなるDNAの一端を結合させたミセルあるいはリポソームを調製し、それらの免疫刺激活性を測定することでアジュバント効果を判断することになっていた。しかしながら、親水性部位へのDNAの結合効率が低いこと、および調製したミセルあるいはリポソームの精製後の回収率が低いことから、実験に十分に供給できる量のアジュバントを確保することが困難であった。したがって、当初計画していた予定を変更した。しかしながら、当初計画も並行して調製方法の検討を進めている。このような状況から現在までの達成度は、当初計画からかなり遅れているが、代替方法が順調に進んでいることから、この代替方によって挽回する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
前記したように、当初計画がうまくいかず、2本鎖DNAを複合化する代替案としてリン脂質からリン酸カルシウム粒子に切り替えた。その結果、リン酸カルシウムの結晶性が2本鎖DNAのアジュバント効果に重要な役割を果たしていることが判明した。しかし、表面が負に帯電しているリン酸カルシウム粒子に、同じく負に帯電している2本鎖DNAが結合する機構に関しては不明である。また、2本鎖DNAを結合した高いアジュバント効果を有するアモルファス状のリン酸カルシウム粒子は、エンドソーム内で溶解すると考えられ、溶出した高濃度のリン酸およびカルシウムイオンによる細胞毒性等については検討していない。今後は、このアモルファス状リン酸カルシウムと2本鎖DNAの複合体の細胞毒性を調べるとともに、この複合体がヒトの単球においてもI型IFNを誘導し、ヒトに応用可能であるかどうかについて検討する。
|