2015 Fiscal Year Annual Research Report
ジストニア発症にかかわる小脳・視床・基底核間の機能的神経路構築
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14F04381
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
杉原 泉 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (60187656)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
NEDELESCU HERMINA 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 小脳核 / 視床 / 基底核 / マウス / ビオチン化デキストランアミン / アデノ随伴ウイルスベクター / 単一軸索 / モノアミン投射 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ジストニア発症に関与する小脳と基底核間の機能的神経回路連絡の全体像を系統的に理解するため、マウスを用いて、小脳核の各部から視床等間脳の各部位に至る出力経路の軸索投射パタン、および、それに関連した視床・基底核間の投射パタンを、従来からのビオチン化デキストランアミン(BDA)を用いる方法と、特別研究員がこれまで学んできたウイルストレーサーを用いる手法で解明することをめざしている。昨年度は、ビオチン化デキストランアミン(BDA)の小脳核(中位核、外側核)への注入によって小脳出力軸索を標識し、標識された小脳核ニューロン軸索を10本あまり再構築することができ、その成果を学会にて発表した。外側核ニューロン軸索が中脳レベルと視床において広範な分岐をもつことが判明した。基底核からの軸索標識も試みたが、まだ、単一軸索再構築には至っていない。また、それらBDAによる標識実験と平行して、アデノ随伴ウイルスベクターを用いる標識実験の開始のための準備を進めた。研究室にとっては初めてのウイルスベクターの導入になるため準備に時間がかかったが、動物実験センターの感染実験室を使うための手続きが終了して、Cre依存ウイルスベクター、Gpr26-Creマウスも搬入され、すぐに実験を開始できるようになった。こちらの実験は、昨年度の予備的調査により、特にGpr26陽性の小脳核ニューロンが視床を経由して大脳基底核との間に神経回路を作る可能性が示されたため、特に注目することにしたものである。 また、この実験と平行して、小脳のモノアミン投射の単一軸先形態の解析を継続し、成果を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のうちのBDAによる小脳核ニューロン標識実験に関しては、研究室にこれまで整備されてきていた環境で行うことができる実験であること、研究室内の大学院生も研究に参加してくれたことなどにより、多数の標本を作り出すことができた。そして、研究員による再構築作業は進展し、その結果を学会発表した。 アデノ随伴ウイルスベクターの実験開始に関しては、受け入れ研究室の側で、これまで全く経験がなかったが、その経験のある研究員の参加により可能になった。研究員が外国人であるため、日本語で記載する必要のある種々の申請書等は研究代表者が記載しなくてはならないなどの点で、大変な作業であったが、平成27年3月末に、組換えDNA実験計画書の最初の承認を得ることができた。それに基づき、動物実験センターの感染実験室における実験計画書を申請し、一方では、ウイルスベクターとその実験を行うCreマウス入手に向け、搬入許可の手続きを行った。途中、組換えDNA実験計画書の改訂が2回必要になるなど、受入研究室ではアデノ随伴ウイルスベクターの実験が未経験だったため手間取ったが、平成27年度中にすべての手続きが順調に終了し、ウイルスベクター入手が終了しCreマウスの繁殖も開始され、実験室のオリエンテーションも終了し、実験室における注入実験のための機器の作製も終了するなどすべての準備が整った。このように、やや困難な準備段階が正当な手順を経て終了し、平成28年度初めから、実験を開始できるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
小脳核ニューロンの単一軸索に関しては、再構築の作業をさらに進めていく。視床VA/VL核あるはCL核など、これまで知られている視床内の神経核に投射すると同時に視床内外のどこに軸索側枝が投射するのか、その軸索側枝や本幹の投射先と、小脳核内の軸索の起始部位との間の位置対応関係はどうなっているかなどを解析する。これまでに、視床に投射する歯状核ニューロン軸索が中脳被蓋領域でこれまで余り知られていない軸索側枝を多く出すことが見いだされており、その解析も進める。一方、淡蒼球内節を始めとする基底核の各所にも微少BDA注入を行い基底核からの出力線維、特に視床に投射する線維を標識し、部位対応関係と枝分かれによる分散投射パタンを同様に解析する。 また、平行して、これまでに実験開始の準備がすべて整ったアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターによる標識実験をすみやかに開始する。実験内容としては、Gpr26陽性の小脳核ニューロンが視床を経由して大脳基底核との間に神経回路を作る可能性が示されたため、特に注目することにしたものである。Gpr26陽性のニューロンがCreを発現するトランスジェニックマウスにおいて、Cre依存性に蛍光タンパクを発現するAAVベクターを局所注入することで、Gpr26陽性の小脳核ニューロンの軸索を特異的に標識し、その軸索集団の投射先の解析、また、単一軸索の投射パタンの解析を行っていく。特定の神経核内において、共通の分子発現パタンを持つ少数のニューロン集団は、共通の投射パタンを持つという仮説を検証しつつ、小脳核と基底核間の神経回路の同定を試みる。
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Research Products
(3 results)