2015 Fiscal Year Annual Research Report
Bファクトリー加速器におけるベル検出器を使った小林益川行列の超精密測定
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14F04721
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
相原 博昭 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (60167773)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
WATSON IAN JAMES 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | Bファクトリー / CP非保存 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、現在建設中のスーパーKEKB加速器を使ったBelleII実験で、小林・益川行列要素を現在の10倍の精度で測定することである。標準理論を超える物理は、小林・益川行列で説明される以上のCP非対称の源であることが期待されている。したがって、BelleII実験における主要な物理課題の一つは、標準理論の正しさを仮定して、小林・益川行列要素を十分な精度で測定し、理論の内部無矛盾を検証することである。このような標準理論の予想値からのズレを測定して、新しい物理の発見につなげるという研究手法は、BelleII実験のような超精密実験によってこそ可能になる手法である。現在の50倍にもおよぶデータ量にもとづいて、B中間子のCP非対称に関する物理量の観測精度を格段に向上させる。特に、小林・益川三角形とよばれる、B中間子崩壊におけるCP非対称の大きさを表すダイアグラムに現れる第3の角度(φ3)の測定精度を、現在の10倍程度向上させる。φ3の測定精度は現在15度程度であり、これを1.5度程度の精度で測定する。φ3は、第3世代bクォークが第1世代uクォークに変化するときの振幅(波動関数)に出現する、フレーバー物理学上きわめて重要な角度であるが、その反応の確率(崩壊幅)が非常に小さいため、これまでの測定では十分な精度が得られておらず、小林・益川三角形の内部無矛盾の検証の大きな障害となっていた。角度φ3を測定するためのB中間子がD中間子とK中間子に崩壊する反応の新しい解析結果を国際会議で公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
標準模型ではB中間子系でのCP対称性の破れの大きさはユニタリティ三角形と呼ばれる複素平面上の三角形の三つの内角(φ1 , φ2 , φ3 )をパラメータとして表すことができる。このうち,φ3 と呼ばれるパラメータについては B- → DK- 崩壊の観測から理論的不定性が非常に小さい測定が可能である。しかし, この崩壊の分岐比が非常に小さいため,現時点では三つの角度の中で測定精度が最も悪く,代替の測定法がいくつか提案されている。φ3 の測定は,今後 Belle II 実験でさらに大量のデータを集めたとき,新物理探索に重要な役割を果たすことが期待されている。本研究者は,Belle実験のB中間子崩壊データを使い、B- → DK-事象に B- → D*K- 事象を加えて解析することで、φ3の測定精度が向上することを示した。そして、Belle 実験の全データを用いφ3 の測定を更新し、(73±15)度と決定した。さらに、Belle II実験用のソフトウェアを使って、測定精度のさらなる向上の可能性も検討した。これの結果を国際会議で発表した。よって、ほぼ順調に進捗した。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の成果を査読つき論文として公表する。
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Research Products
(2 results)