2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14F04726
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 輝夫 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (30251474)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
GINES Guillaume 東京大学, 生産技術研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 分子プログラミング / ナノマイクロシステム / DNA tool box / 群ロボット |
Outline of Annual Research Achievements |
受け入れ研究者の研究グループでは、人工的に設計したDNA分子と酵素から構成される反応系において、たとえば振動やスイッチングなど複数の状態をとることが可能な分子計算システム(DNA Tool Box)の開発を手がけており,本システムを用いてある種の情報処理を行うことが可能である。これまでの実験系では、システムを構成するDNA分子の量的な変動をモニターすることによって、たとえばPredator-Preyシステムのようなダイナミクスをモニターするなど、分子レベルでの動的変化を創出することに成功してきた。これに対し、本研究では、多数の人工のマイクロあるいはナノサイズ粒子の表面にDNAを固相化し、粒子間の相互作用を、DNA Tool Boxによって制御することによって、粒子の群行動を発現させることを試みている。 今年度は,まず,DNAがエンコードされたマイクロ粒子(DNAを固相化した多孔質のマイクロ粒子, 直径30um)を用い,従来のマイクロチューブ内の溶液系と,マイクロ粒子の系とでDNA Tool Boxの反応の振る舞いの違いについての検討を行った.続いて,マイクロ粒子とpseudo-infinite reactorとしてのマイクロ流路(幅約2mm x 長さ約2cm x 高さ200um)を組み合わせた系の中で,自己触媒反応を実装しうることを確認した.さらに,この系を用いて,双安定回路(休止状態:自己触媒状態)を実装することにも成功している.また、本系を用いて,具体的にどのような群行動が実現可能か理論的な検討を行い,どのような実装系(反応系ならびに固相化分子)が必要となるかを明らかにすることを通じて,群ロボットシステムの設計指針を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでに開発されてきたDNA Tool Boxは、バルクの溶液系における反応を前提としているため、粒子や表面に固相化されたDNAとの反応を想定した調整は行われてこなかった.このため研究初年度である平成26年度は、DNA Tool Boxの改良と粒子の群行動に関わる理論的な検討のみを行う予定であった。しかしながら,今年度は上記の理論的な検討に加え,実際にDNAを固相化した多孔質のマイクロ粒子を用いた実装に関する研究も実施できたため,当初の計画以上に進展していると判断した.また,平成26年度中に,DNA Tool Boxとマイクロ粒子を用いて具体的にどのような群行動が実現可能か、またその際には、どのような反応系ならびに固相化分子が必要となるかなどについて明らかにし、群ロボットシステムの設計指針とする予定であったが,来年度に実施予定の群行動を選択し,その実装系について見通しを得たたため,おおむね順調に進展していると判断した.以上より,全体の達成度としては当初の計画以上に進展している,と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年度目である平成27年度は、平成26年度に開発したマイクロ粒子とマイクロ流路を組み合わせた系とDNAの反応系を発展させ,生物の群行動を模擬したいくつかの行動パターンを想定して、多数の粒子が入力(DNA分子)に合わせて動的かつ群としての状態変化を起こさせることを試みる。これを通じて,2次元に配置されたプログラム化されたエージェントとしてのマイクロ粒子がどのようにマイクロ粒子間で情報を交換するのかについて検討を行い,この系が細胞内や生物および生態系において生じている生物学的ダイナミクスを模擬できるのかについて議論する.特に生態系モデルでは,DNA鎖を病原体とし,マイクロ粒子を宿主とし,罹患から伝染までのダイナミクスを模擬する感染症のモデル(In vitro 感染症モデル)の構築を目指す.この反応系では,病原体の病原性を,マイクロ粒子の機能化や酵素濃度ならびに反応温度などで調節可能となるようにし,可能であれば免疫系のダイナミクスも系に組み込むことを目指す.加えて,生物モデルでは,脊椎動物の胚形成プロセスにみられるclock and wave front モデルの実装を試みる.これらの実装には,双安定性を持つマイクロ粒子,DNA振動子,進行波が鍵となる.
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Remarks |
本年度の研究成果を第21回 International Conference on DNA Computing and Molecular Programmingに投稿した(Gines, G., Zadorin, A. Fujii, T.,RondeleZ, Y. Microscopic agents programmed by DNA circuits). 5月初旬に採択・不採択が判明する.
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