2014 Fiscal Year Annual Research Report
非平面多環芳香族炭化水素の包接による新奇物性と反応の開拓
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14F04744
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤田 誠 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90209065)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SCHMIDT Bernd Martin 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 自己組織化 / 分子認識 / 芳香族分子 / ナノ空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、非平面(ボウル型)の芳香族化合物を自己組織化ケージ内へ包接させることで、単独では見られないコンホメーションを誘起し、特異な反応性や物性を解明することを目標としている。まず、代表的な非平面状の芳香族化合物であるコラニュレンを、1または2分子、自己組織化ケージへ包接させることで、単独では不安定な平面のコンホメーションを誘起させることを試みた。さまざまな形状の自己組織化錯体のうち、箱形のケージが最適であると考え、包接を検討した。 まず、平面有機分子が1分子包接できる、小さな箱形のケージを用いた場合は、全く包接されなかった。一方、もう少し大きな箱形のケージを用いた場合には、コラニュレンが2分子包接されることを見出した。誘導体であるブロモコラニュレンを用いた場合には、包接錯体の単結晶が得られ、X線結晶構造解析の結果、箱形のケージとのスタッキングにより、通常は非平面のコラニュレン分子がほぼ平面に近いコンホメーションに誘起されていることが明らかとなった。 さらに、この箱形の自己組織化ケージに対して、非平面のコラニュレンと平面のナフタレンジイミドを混合することで、箱形のケージ内にコラニュレンとナフタレンジイミドがペア選択的に包接されることも見出した。この包接錯体についてもX線結晶構造解析を行い、包接されたコラニュレンがナフタレンジイミドとのスタッキングにより、平面に近いコンホメーションへと誘起されたことを明らかにした。 以上、自己組織化錯体のナノ空間を利用することで、非平面の芳香族分子の特異なコンホメーション誘起に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、非平面(ボウル型)の芳香族化合物を自己組織化ケージ内へ包接させることで、単独では見られないコンホメーションを誘起し、特異な反応性や物性を解明することを目標としている。そのためには、自己組織化ケージ内に、非平面の芳香族化合物を包接させることが必要不可欠であり、本年度の研究で、それが可能となるケージを見つけることができたため、順調に進展していると言える。また、非平面の芳香族化合物として代表的なコラニュレンを用いて、達成できたため、本手法はその他の非平面の芳香族化合物に対しても広く適用できると思われる。さらに当初の狙い通り、自己組織化ケージ内では、非平面のコラニュレンがほぼ平面状のコンホメーションへと誘起されたことも、構造解析によって明らかにできた。よって、本手法を用いて、さまざまな種類の非平面の芳香族化合物のコンホメーション誘起に基づき、特異な反応性や物性を明らかにすることが、今後期待できる。以上より、本研究は、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、本年度の研究で達成したコラニュレン2分子包接錯体や、コラニュレンとナフタレンジイミドとのペア包接錯体の溶液状態での構造決定を行う。各種NMR測定を行うことで、自己組織化ケージ内での、コラニュレン分子のフリッピング運動の特異な挙動について明らかにする。自己組織化ケージのナノ空間によって、変化した活性化エネルギーを明らかにする。さらにこのとき、コラニュレンにさまざまな官能基を導入することで、フリッピング運動の変化における立体的な影響と電子的な影響についてもそれぞれ明らかにする。 続いて、自己組織化ケージ内にペア包接された分子同士での特異な反応について検討する。ペア包接錯体を加熱することで、ディールス・アルダー反応や、光を照射することで[2+2]反応などを起こすことを試みる。通常はとらない、平面状のコンホメーションを誘起されたコラニュレンが示す、反応性を明らかにする。 さらに、ユニークな物性についても解明する。コラニュレン包接錯体の水溶液を使用して、一分子電気伝導度測定を試みる。コラニュレン2分子包接錯体を測定することで、これまで知られる平面状の芳香族分子の電気伝導度と、非平面芳香族分子の電気伝導度の違いを明らかにする。続いて、コラニュレンとナフタレンジイミドのペア包接錯体を測定することで、コラニュレンのフリッピング運動に基づいた、一分子レベルでの整流特性についても検証する。 以上の計画により、本研究を大きく推進する。
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Research Products
(1 results)