2015 Fiscal Year Annual Research Report
位相的ソリトンによるブレーンワールド模型の動的構築とブレーンダイナミクスの理解
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14F04750
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
衛藤 稔 山形大学, 理学部, 准教授 (50595361)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BLASCHKE FILIP 山形大学, 理学部, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ブレーンワールド / 余剰次元 / トポロジカルソリトン / 国際交流研究 / チェコ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は標準理論を超える新しい候補である余剰次元模型を自然な枠組みの中で構成することである。そのために高次元時空における超対称性ゲージ理論において、超対称性の破れを伴いかつ位相的に安定なトポロジカルソリトンの一つとしてドメインウォール(5次元時空の中の4次元膜)に注目している。特に標準模型に必要な場がどのようにしてドメインウォールに局所化されるのかという機構を明らかにすることが重要なポイントである。この点を明らかにするために本年度の行った研究は、(1) 超対称ゲージ理論におけるドメインウォールの解析解を系統的に求める方法論の開発:ドメインウォールに局在するモードを解析する上で解析解が存在する場合はモード展開が厳密に行えるが、これまで知られている模型の大部分においては運動方程式が数値的にしか解くことができないため、数値的な近似解を用いなければならない。本研究によりこの点が改善され、厳密解の存在する模型でブレーンワールド模型の構築の可能性が広がった。(2)先行研究(Arai,Blaschke,Eto,Sakai PTEP2013,010003/093B01)でゲージ場とスカラー場の局所化が成功している超対称ゲージ理論には、ドメインウォールの他に一般にボーテックスとマグネティックモノポールが位相的ソリトンとして存在することが知られている。これらのソリトンがドメインウォール場の低エネルギー有効理論にどのような影響を及ぼすかということを明らかにするために、特にボーテックスとドメインウォールが共存するBPS解の詳細を調べた。この配位はこれまで特殊な極限を除いて解析解/数値解共に得られておらず、定性的な研究しかされていない。そこで一般的な結合定数の場合に数値的にBPS方程式を解いた。これにより低エネルギー理論に現れる磁荷の分布など様々な物理量を定量的に評価することが可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度研究の当初計画は、ボーテックス/ドメインウォールの共存系の数値解を求めること、および先行研究では実現されていない、標準模型のゲージ群の基本表現に属するヒッグス場や、カイラルフェルミオンのドメインウォール場への局所化機構を明らかにすることであった。ボーテックス/ドメインウォールの数値解については一通りの研究を済ませ学術論文として結果をまとめたが、数値的な解析を進めるにつれて、研究当初に予想していたよりも多くの興味深い現象があることがわかり、研究結果を解析しそれをまとめるのに多くの時間が必要となった。 その結果、もう一つの研究計画である、標準模型により近い模型の構築については計画通りに研究が進まなかった。カイラルフェルミオンの局所化に関する基本的なメカニズムはほぼ明らかになっているが、一方で基本表現のヒッグス場や、ドメインウォール場での標準模型の構成についてはまだ単純で自然な模型の構成方法がわかっていない。 一方で、当初計画にはなかったが、ドメインウォール/ボーテックス複合系の解析を進めていく中で、これまで知られていなかった、ドメインウォールに対する解析解(厳密解)の構成について系統的な方法論があることが分かった。このことについて研究をまとめることが出来た。 以上の理由から、本研究計画はおおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進の方向は、まず標準模型に必要な(必要な分だけの)フェルミオン場がドメインウォール上に局在する模型を構成する。フェルミオンだけをドメインウォール上に局所化させるのは難しくないが、同時に標準模型のゲージ場を局所化させる必要があるので、先行研究で行った5次元超対称ゲージ理論におけるSakai-Ohta機構が同時に働く模型を考える。必要があればSkai-Ohta機構を拡張するか、Dvali-Shifman機構と呼ばれるゲージ場を局所化させる別の機構を利用することも考える。特にSUSY SU(5) GUT 模型がドメインウォールに局所化する解を構成することを目指し、これが標準模型にどのように落ちるかということを理解する。そのためには超弦理論のD-braneとドメインウォールとの類似性に着目し、複数の重なったドメインウォールが5次元方向に部分的にバラバラにずれることでヒッグス機構が起きることを確かめる。 さらに、電弱対称性SU(2)xU(1)のU(1)ゲージ対称性への自発的な破れが、ドメインウォールの立場からどう理解されるのかを理解する。電弱理論のヒッグス場が期待値を持たないドメインウォール解から、ヒッグス場が期待値を持つ解へ遷移して電弱対称性が自発的破れる際に、ドメインウォールの内部構造が変化することが予想されるので、ドメインウォール解がどのように変化するのか、解の存在を含めて調べる。 また、本年度が本研究計画の最終年度に当たるので、研究を学術論文としてまとめ、学会などで発表する。
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Research Products
(4 results)